リテールマーケティング ㊱
② 万引き防止対策
1. 万引き=ロス率の増加=利益率の低下
小売店が利益率の向上をはかるためには、ロス率を低減することが重要で
ある。ロスが発生する要因には、値下げロス、廃棄ロス、不明ロスがある。
このうち、不明ロスは、帳簿上(計算上)の在庫と実際に棚卸を行ったときの
在庫の差額であり、その外的要因の1つが万引きや盗難によるものである。
不明ロスは発生時点から発覚するまでにタイムラグがあるため、未然に
対策を講じることが重要である。
—省略—-
2. 万引き防止上のガイドライン(百貨店・スーパーのケース)
ここでは、神奈川県警察が作成した「万引き防止のガイドライン」から、
百貨店・スーパーのケースを取り上げて紹介する。
本ガイドラインは、万引きを発生させないための環境づくりを促進するため、
防犯カメラの設置・増設などの施設における防犯対策、店員の声かけ活動を
強化するなどの行動による防犯対策といったハード、ソフト両面にわたる
対策を集めたものである。
(1) ハード面(施設)における防犯対策
① 防犯カメラの設置
売場、店舗の出入口、エントランスホールのほか、駐車場など店舗周辺
にも設置し、来店客に防犯カメラが作動していることが一目でわかるように
「防犯カメラ作動中」などと記されたプレートなどを掲示する。
また、撮影対象者の顔などがはっきり認識できる角度に設置する。
映像の記録機能は、画像解像度が高く、メンテナンスが容易なデジタル
方式を導入し、録画映像は一定期間(おおむね1か月)保存する。
防犯カメラの映像は、警備員室において録画しながら監視できるシステム
(モニタリングシステム)を整備するほか、レジコーナーなどにテレビモニ
ターを設置して監視性の高さをアピールする。
② 防犯ミラーの設置
死角となる場所や十分な視認性が確保できない場所には、防犯ミラーを
設置する。
③ 万引き防止用機器の導入
高額商品や被害が多い商品、売れ筋商品などには、次のような万引き
防止用機器を取り付ける。
・防犯タグシステム(商品にタグを貼り付けて陳列し、その商品をレジで
精算せずにゲートを通過して外に持ち出すと警報音を発するもの。)
・インクタグシステム(商品にタグを取り付け、そのタグを無理に外そうと
すると特殊インクが飛散するもの。)
・ワイヤー式タグシステム(商品に電子ケーブルを取り付けて陳列し、
その商品を持ち出そうとしてケーブルを切断したり、精算せずにゲートを
通過して外に持ち出すと、タグとゲートの両方から警報音を発するもの。)
④ 鍵付きショーケースの設置
高額商品などは鍵付きのショーケース内に陳列し、顧客が容易に手に
取れないようにする。
⑤ レジコーナーの設置箇所
レジコーナーなど、買上商品を精算する箇所は、店舗内全体の見通しが
確保できる位置に設置する。
⑥ 商品の陳列棚などの配置
店舗内に死角が生じないよう、商品の陳列棚などの設置場所や商品の
陳列方法に配慮する。
⑦ 啓発用ポスターなどの掲示
店舗内外の目につきやすい場所に啓発用のポスターやチラシなどを掲示し、
万引き防止に対する店舗側の姿勢をアピールする。
ポスターには、売場の形態などにより「試着室への多数の衣類の持込みを
禁止します」、「未精算の商品のトイレへの持ち込みを禁止します」など、
万引き防止のための店舗の方針を明示する。なお、はがれかかっている
ポスターをそのまま放置すると、防犯に対する関心が薄い店舗と判断さ
れるおそれがあることから、掲示状態を常に確認する。
⑧ 店内専用買物カゴの導入
精算前の商品を自分で持参したバッグ(マイバック)などに入れることを
防ぐため、店内専用の買物カゴを設置し、精算前の商品については専用
カゴを利用するシステムとする。
この続きは、次回に。