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リテールマーケティング  ㊳

③ クレーム対応の基本手順と取り組み

 

1. クレームは必ず発生する

 

昨今、クレーム(苦情)の件数が増加してきたといわれている。

その背景には、企業のさまざまな不祥事やトラブルが顕在化してきたこと、

24時間営業の日常化などから便利であることが当たり前となり、我慢の

きかない世の中になったこと、インターネットの普及などにより匿名での

クレームが可能になったことなど、さまざまな理由が考えられる。

クレームには初期の段階で適切に対応しないと、執拗な嫌がらせを受けたり、

SNSで中傷されたりして後々大きな問題に発展しかねない。

しかし、好みや期待水準は顧客によって異なるため、すべての顧客を満足

させることはむずかしい。

このような状況下、クレームは必ず発生するということを前提に、発生した

クレームにどのように対応するかに注力することが大切である。

 

表3-1 小売業におけるクレームのパターン

 

[項目]→[クレームの例]

 

品質・性能・価格に関するもの→「期待どおりの品質・性能ではない」、

「品質・性能と比べ、妥当な価格ではない(高い)」

 

表示に関するもの→「表示が分かりにくい」、「商品が取扱説明書の表示

どおりではない」

 

購入時のサービスに関するもの→「注文時の約束を守ってくれない」、

「接客態度がよくない」

 

アフターサービスに関するもの→「アフターサービスが悪い(ない)」、

「修理代がかかりすぎる」、「修理できない(修理してもらえない)」

 

2. クレーム対応の必要性

 

クレームは、顧客の期待する水準に対して、商品やサービス、販売員の

接客などが下回った場合に発生する。

顧客は期待しているからこそクレームを伝えてくれる。

また、実際にクレームを伝えてくれる顧客は不満を持った人のうちわずか

4〜5%ほどで、残りの約95%の顧客は、不満があっても黙って離れていく

だけといわれている。さらに、直接、クレームを伝えない潜在的な顧客

(サイレントクレーマー)は、逆に口コミやSNSへの書き込みによって不満を

拡散しやすい。

クレームは顧客の声、期待値のあらわれとして受け止め、まずはきちんと

相手の話を聴くこと。何に不満を持っているのか、何を言いたいのか、

真摯に聴くことがクレーム対応においては一番大切である。

「自分の話をちゃんと聴いてもらええていない」と感じると、顧客の怒りは

増幅する。いったん冷静になってもらうことで、順を追って状況(事実)を

確認し、解決策を提示していくことができる。そして、クレームを社内で

共有し、商品やサービス、接客の改善に生かしていくことである。

店舗のスタッフ全員が正しいクレーム対応の方法を身につけ、店舗全体で

同様のトラブルをなくしていくことで、店舗のサービスレベルは格段に

向上する。また、店舗スタッフにクレーム対応のスキルが身につくことに

よって、特に最初の対応を任されることの多い若手販売員の離職率が下がると

いうメリットもある。

今の若い人は、親にも先生にも怒られた経験がほとんどないケースも珍しく

ない。そのため、目の前で顧客から怒鳴られるだけでパニックになり、

大きなストレスとなる。会社として、クレーム対応の体制がしっかりと

構築されていれば、いざという時にも落ち着いて対処できる。

なお、実際にクレームに対応するにあたっては、「店舗(会社)を代表して

いる」という意識で行動することが必要である。

たとえば、顧客に何か言われたらすぐに「上の者を呼んで参ります」と

対応するのは、一見丁寧なようであるが不適切な行為である。

顧客は純粋に注意点を伝えたかった、ちょっと聞いてもらえればよかった

だけかもしれないのに、「逃げただろう」と怒りに変わってしまいかね

ない。自分は当事者ではないという無責任な態度は、顧客の気持ちを無視

した対応となる。

 

3. クレーム対応の基本手順

 

クレーム対応には基本的な手順がある。

手順どおりに行えば、若手の販売員でも十分に対応が可能である。

 

(1) 手順1:顧客の話を聴き、誠実に対応する

 

クレーム対応では、まず、不快な思いをさせてしまったことに対して、

顧客に心からお詫びする。そして顧客の話を丁寧に聴き、事情や心情

(悔しい、悲しい、裏切られた、恥ずかしいなど)を理解することが大切で

ある。

 

① クレームには誠実な態度で臨む

 

クレーム対応でやっていけないことは、「言い訳」や「言い逃れ」である。

その場で適当な応対を行って最初は取り繕うことができたとしても、二度目は

通用しない。

 

② 顧客の心情を理解し、話を聴き、気持ちを鎮めてもらう

 

クレームを入れてくる顧客の多くは怒っている。その顧客の話をさえぎって

自分の立場を主張したり、顧客の間違いや勘違いを指摘してはいけない。

まずは最低3分間、じっくりと話を聴く。話を聴くうちに、顧客の頭の

なかも整理され、徐々に怒りの感情が和らいでいく。顧客が興奮している

時ほど冷静になることが大切である。

 

③ 顧客の話を聴くポイントを理解し、実践する

 

顧客の話を聴くポイントは、次の通りです。

 

・相づちと頷きにより、顧客に「承認された」と感じてもらう。

・顧客の言葉を復唱することにより、話を理解していることを示す。

・顧客に考えてもらう「間」をつくる。

・「恐れ入りますが」「もしよろしければ」「差し支えなければ」「失礼

     ですが」「あいにくですが」などのクッション言葉を使用する。

 

□ クッション言葉

 

クッション言葉とは、相手に「お願い」や「反論」、「お断り」などを

する際に、文の前に入れて使用する言葉で、文の印象を柔らかくする効果が

あります。 相手に配慮しながら話すことが出来るため、主にハッキリと

意思を伝えることが多いビジネスシーンにてよく使われています。2018/01/24

 

表3-2 お詫びの言葉の例

 

[お詫びの言葉]

 

「ご迷惑をおかけしまして申し訳ございません」 

「大変失礼をいたしました」

「ごもっともでございます」

「おっしゃるとおりでございます」

「ご親切に注意いただき、ありがとうございます」

「誠に不行届で申し訳ございません」

「早速調べてお返事申し上げます」

「いろいろとお手数をおかけいたしました」

「今後十分注意いたします」

「今後ともよろしくお願いいたします」

 

お詫びに不適切な言葉]

 

×「本当ですか」

×「それはお客様の勘違いです」

×「そんなことは絶対にありません」

×「だって」

×「でも」

 

(2) 手順2:事実の確認(状況把握)をする

 

顧客の心情を理解して、顧客の感情が和らいできたら、クレームが発生した

原因や顧客の要望を確認する必要がある。顧客に事実確認を行う際は、

できるだけメモを取るようにする。

 

事実確認のポイントは次のとおりである。

① いつ、どこでトラブルが発生したか

② どんな事が起こって、何に対して不満を感じているのか

③ 誰が不満を持っているのか

④ 原因、問題点は何か

⑤ 当方に対して、どのようにしてほしいと思っているのか

 

(3) 手順3:解決策や代替案を提示する

 

事実確認後をした後は、対応策を検討のうえ、できるだけ早く、相手に

解決策や代替案を提示する。ただし、その際はこちらから一方的に提案

するのではなく、あくまで顧客の立場に立って、最善の問題解決法を提示

する。

 

 

この続きは、次回に。

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