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Coffee Blake-12月18日(金) 「人間の発見」

2020.12.16 日経新聞 夕刊記事をご紹介致します。

 

株式会社シニアイノベーション

代表取締役 齊藤 弘美


人間の発見

    日本私立学校振興・共済事業団理事長/労働経済学者

    清家 篤さん

 

 

高齢社会をデザインする③

 

関心は企業社会における高齢労働者と若年労働者の「摩擦なき共存」に

向かう。欧州では若年失業率が20〜30%に達し、経済問題だけでなく

社会問題になっているためだ。

 

日本の新卒一括採用と長期雇用の効用は大きいと考えています。

いずれも最近は評判が良くないのですが、失業率を低くないのですが、

失業率を低く抑え、「労働力も企業の投資の対象たり得る」としたベッ

カーの人的資本理論とも整合的です。

 

長期雇用は「日本的雇用慣行」などと表現されますが、1980年代まで

米国の大企業ホワイトカラーでは一般的でした。

島田晴雄先生の米国での調査にお供した際、デュポンの人事担当者は

「自分たちが解雇対象になると思ってもいなかった」と述懐していました。

 

「生涯現役」社会の実現には、全世代が納得できる仕組み作りが必要だと

考える。

 

企業は、ある労働者が雇用期間中に生み出す生産価値の総額に見合った

賃金を払います。

その際に若い時には生み出す生産価値よりも安く、中高年になったら生産

価値よりも高い賃金を支払い、生産価値総額と賃金総額を定年で均衡させ

ます。

この仕組みの経済合理性を示したのがスタンフォード大学のエドワード・

ラジアー教授です。この場合、賃金カーブの傾きを緩めれば、両者を均衡

させる点としての定年を先に延ばせます。

若い時は毎年上昇する年功賃金でいいと思います。

そして一人前になった30代半ば以降のカーブの傾きを今より緩くして、

65歳定年に向けてつなぎます。

 

全世代の「納得」がカギ

 

70歳までの就労支援を企業の努力義務とした改正高年齢者雇用安定法が

2021年春に施行されますが、大手企業で65歳定年の企業は依然少数です。

賃金低下を伴う再雇用型では就労意欲が減退し「生涯現役」を阻害します。

在職中に能力アップの機会を与え、全世代が納得する仕組みが必要です。

 

「即戦力志向」に疑問

 

日本企業にも最近広がる「即戦力志向」には懐疑的だ。

 

国際労働機関(ILO)の「仕事の未来世界委員会」、スイスの山村で開か

れる大学学長会議、そしてもちろん海外での学会において雇用について

随分議論してきました。それらを通じて建前と違う各国の労働慣行・実態も

見えてきます。

欧州の企業は基本的に空席補充で経験者を採用し、未経験の若者は後回し。

米企業は即戦力は強く求めますが、新卒も実はかなり採っている。

「○○国では」と外国の表向きの制度だけを推奨する「ではの守(かみ)」に

従って、日本企業が新しさに次々飛びつくのは考えものです。

即戦力志向などもその一つではないでしょうか。

 

ベンシルベニア大学ウォートンスクールのピーター・キャベリ教授と

ダボス会議でパネリストを務めた際、米国の大手IT企業の副社長が

「ウォートンはもっと即戦力を送り出してほしい」と発言しました。

キャペリ教授は即座に「即戦力を求める会社は、後で技術が陳腐化したら、

その人材を追い出しかねない。

私は大切な卒業生をそんな企業に送りたくない」と切り返しました。

私も全く同意見とコメントしました。

 

□ 述懐(じゅかい)

 

愚痴や不平を言うこと。

 

 

□ 均衡(きんこう)

 

二つまたはそれ以上の物事の間で、力や重さなどの釣り合いがとれている

こと。バランス。「均衡が崩れる」「均衡を保つ」

 

□ 出羽の守(ではのかみ)

 

海外や他業界などをあげ、「○○では」と何かにつけて他者の例を引き合いに

出して語る人のことを「出羽(でわのかみ)」と呼ぶ。

もちろん皮肉を込めた言い方だが、出羽と揶揄され続けても、そういった

発言を繰り返す人がSNSでは後を絶たない。2017/12/04

 

□ 陳腐(ちんぷ)

 

古くさいこと。ありふれていて、つまらないこと。

また、そのさま。


 

日本的雇用慣行「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」へ移行を

検討している企業が増えそうだ。

私も、社会人の時は「年功序列」よりも「職務・職能」が良いと思って

おりました。

 

今回の記事については、「このような捉え方」もありだな、と思い、ご紹介

した次第です。

少しでも、ご参考になれば幸いです。

 

 

2020.120.18

 

株式会社シニアイノベーション

代表取締役 齊藤 弘美

 

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