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リテールマーケティング  ㊸

第5部 販売促進策の類似用語解説編

 

① 対面販売と対話販売

 

1. 対話によって商品を推奨する

 

(1) 対面販売とは

 

対面販売とは、セルフサービス販売方式と対照的に使われる用語である。

一般的には、顧客に対して販売員が陳列ケースやレジカウンターを挟んで

向き合い、商品の品質や使い方などを説明しながら、販売員が購買決定の

主導権を握って販売する形態を指す。

したがって、販売員は顧客とともに店内を歩き回ることはほとんどない。

そのため、数人の顧客に対しても一人の販売員で応対することができる

利点がある。

しかし、商品の受け渡しと金銭の授受だけの対面販売であれば、取扱商品に

関する専門知識や高度な販売技術を身につけたプロフェッショナルを店舗に

常駐させる必要はない。極言すれば、アルバイトのマネキン(宣伝・販売

促進員)でも対面販売は形式上つくられるのである。

どんな人でもよいから、店内や特定コーナーに専従し、誰にでも同じ説明を

マニュアルにもとづいて行うだけであれば、それは大量の顧客への対面

販売である。

 

(2) 対話販売とは

 

対面はんばいに対して対話販売は、広義の対面販売に含まれる購買促進策の

一環としての行為である。つまり、プロフェッショナルの意識を持った

販売員による専門性に富んだ相談(カウンセリング)および提案行為(アド

バイス)として捉えるべきアプローチ手法である。それゆえ、真の推奨

販売を実施している小売店は意外に少ないのが現状といえる。

対話販売とは、ただ単に顧客と対面し、必要な会話によって特定の売り

たい商品(通常は、粗利益率の高い商品)を販売する形態ではない。

顧客の悩みや不満、あるいは欲求などを十分なヒヤリングによって把握し、

それらを解消するために最適な商品を2〜3品目、明確な理由を添えて

推奨する。そして、購買決定に関しては、販売員ではなく、顧客の意志に

委ねることが対話販売のポイントである。

 

2. 対話販売の留意点

 

対話販売を行ううえでは、次の点に配慮しなければならない。

 

① 推奨するときは、1品目ではなく2〜3品目を提示する

 

これには、あらかじめ選定しておいた高粗利益率やリベート対策となる

商品を、売る側の都合で顧客に押しつけることを避ける意味を含んでいる。

顧客の求める商品や顧客のためになる商品を2〜3品目提示し、それぞれの

比較説明によって、最終的には顧客が自ら購買を決定することが望ましい。

なぜなら、推奨とは、あくまで買う側の意思を尊重すべきサポート行為

だからである。

 

② 顧客に最も適した商品を、適切な理由を明示し選出する

 

これは、一人ひとりの顧客に推奨する商品がなぜ適切なのかを論理的に

伝え、納得してもらうことを意味する。

たとえば、さまざまな色合いのセーターのなかから暖色系を2〜3点選んで

推奨する場合、なぜ、その顧客に暖色系のセーターが似合うのかをわかり

やすく説明することが大切である。顧客の様子を観察し、ヒヤリングに

よって現状の不満や悩み、もしくは欲求などの原因を掴むと同時に、感性や

希望を敏感に嗅ぎ取り、それを提案する。つまり、どのような生活シーンを

どのような理由で提案すればよいかが重要となるのである。

 

③ 親身になって顧客の話に耳を傾け、意見交換する

 

接客中の販売員の顔のなかに、“どうせ相手は業務上の他人”という考えが

潜んでいたら、真の対話販売は不可能になってしまう。

対話販売の基本は、たとえば「家族の悩みを聞いて話し合いをする」ような

ことである。したがって、いきなり商品説明など商売の話をするのではなく、

家族や親しい友人と接するときと同様に、相手のことを気遣って話を聞いて

あげることが大切である。

 

④ 顧客が安心して何でも相談できる雰囲気を醸し出す

 

対話販売には、顧客が落ち着いてくつろげる環境を提供することと、緊張感を

和らげるための温かい笑顔が絶対不可欠である。

笑顔は、顧客に安心感と快適な気分を提供するための販売員の素直な感情の

表現である。したがって、無理な作り笑いは顧客に見破られてしまうので

慎むべきである。

 

 

 

この続きは、次回に。

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