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リテールマーケティング  ㊷

2. ストレスをため込まないための工夫

 

ストレス問題への根本的な対策は、ストレスの原因となっている事柄や

状況そのものを特定し、それを解決することである。

しかし、それが最も困難なことでもある。

そこで、次の策として、ストレスに立ち向かうための基礎的な体力・気力を

養っておくことが大切である。前項で取り上げた睡眠は、その一例である。

もう1つの着眼点は、日々のストレスが過剰に蓄積しないよう、ストレスを

適宜、処理する意識とスキルを身につけることである。

これらは、ストレス状態から派生する心身の疾病を予防するうえでも重要で

ある。

 

(1) 日常の規則的な生活リズムを維持する

 

“規則的な生活を送ることは、健康を保持するための基本である”といわれる。

ちょっとした不摂生によって風邪をひいたり、こじらせてしまったりすると

いうことは日常、身近に経験することがある。

これと同様に、心の健康を安定的に保ち、かつ、ストレスへの抵抗力を

維持する為には、日々の生活リズムを一定に保つ必要がある。

たとえば、夜は遅くとも12時までには就寝し、朝7時までには起床する。

三度の食事をきちんと摂る。こうしたごく当たり前のことが、脳という心を

司る臓器の健全性と安定性を保つうえで大切なリズムとなるのである。

 

(2) 職場でできる簡単なストレッチングを試してみる

 

ストレス状態が長く続くと、交感神経の働きが一方的に過剰になってしまい、

やがてその弊害が心身の問題となって表面化してくる。

こうした場合、ストレッチングを行うことによって交感神経の活動を抑え、

副交感神経の機能を高めることで体にリラックス効果をもたらすことが

できる。

そこで、職場で簡単にできるストレッチングを行ってみることをお勧めする。

座っての作業が中心の従業員は、椅子から立ち上がり、腰・背中・肩・首の

順にストレッチングを行う。また、立ち仕事がメインの販売員は、これらに

加え、膝関節や足関節など下肢の屈伸運動も取り入れてみるとよい。

なお、ストレッチングは体の中心に近いところを先に行い、腕や脚は後から

行うのが基本である。

 

図4-1 職場でできる簡単なストレッチング

 

・簡単な体操肩の上げ下げ肩を上げて少し止め、息を吐きながら力を

 抜いてストンと落とする

 

・マッサージ首すじ親指以外の四指で頭をつかみ、親指で首すじを

 押すようにマッサージする。

 

・ストレッチング-背中両手を組んで前へ伸ばし、おへそをのぞきこむ

 ようにして背中を丸める。

 

・ストレッチング腰を伸ばして、からだを後ろにひねり、背もたれを

 つかむ。

 

・ストレッチング上半身両手を組んで上に伸ばしながら胸を張る。

 

・簡単な体操首まわし首・肩の力を抜き、首をゆっくりとまわす。

 

出所:「小売業におけるストレス対処への支援」厚生労働省

 

(3) 自分なりのリラックス法を持つ

 

人が最もリラックスできるときとは、次のようにさまざまである。

 

・好きな音楽を聴いているとき

・スポーツや趣味に打ち込んでいるとき

・家族との団欒のとき          など

 

自分にマッチしたリラックス法を持っている人は、持っていない人に比べて

ストレスへの抵抗力が明らかに強いといわれている。

自分が気楽に楽しめる場面を探すことが大切である。

たとえば、カラオケや合唱など、歌を歌うことは自然と副交感神経の活動を

高める呼吸法(大きく吸って、ゆっくり吐く)の実践につながり、リラックス

効果が高いといわれている。逆に、喫煙や飲酒は一時的な気晴らしになった

としても、それ以上に健康上のデメリットが多く、ストレス解消法としては

相応しくない。

 

(4) 計画的に休暇を使う

 

「仕事で疲れてしまい休日はほとんど寝て過ごす」、というようなことが

習慣化していないだろうか。疲労回復のためには、睡眠が重要である。

しかし、過度の睡眠はかえってストレスとなり健康にも良くない。

また、仕事にはオンとオフの切り替えが大切である。

これは、単に働いている時間とプライベートな時間とを区別することでは

ない。

人間の脳を効率的に働かせるためには、一定の休息時間が必要であり、

その時間は脳が十分にリラックスできていることが大事である。

これが“オフ”ということである。したがって、仕事に追われて疲れた脳を

十分に休ませるために、休暇をボーッと無為に過ごすのではなく、計画的、

かつ、積極的に休暇を楽しむことが必要である。

忙しく、ストレスの多い毎日であればなおさら、趣味などを心から楽しみ、

心の落ち着きを感じるような休暇になるよう心がけることが大切である。

 

(5) 第三者に話を聞いてもらうことを心がける

 

「人に迷惑をかけず自分で何とか解決したい」「他人に相談してもどうせ

無理である」「弱い自分を見せたくない」などの思いから、長期間にわたり

ストレスを抱え込んでいる人は少なくない。

軽いストレス、時間が解決してくれるようなストレスであれば、大きな

問題はない。しかし、なかなか解決の糸口が見えないストレスを自分一人で

抱えるのは望ましいことではない。その問題を解決できないばかりでなく

状況によってはうつ状態に進展しかねないからである。

したがって、同じ会社の人でなくても構わないので、普段の人間関係、

交友関係を大切にし、いざというときに相談できる人を持つようにする

ことが大切である。仮に、直接的な解決策が得られないにしても、他人に

相談することで気持ちが楽になり、悩みを口にすることで問題点が自分の

なかで整理でき、合理的に解決していく道筋が見えてくる。

 

(6) 自身の性格の特徴を知りコミュニケーションに活かす

 

人は、一人ひとり異なった性格を持っている。

たとえば、ウェットな性格の人もいればドライな人もいる。

どちらがよい性格で、どちらが悪い性格かというものはない。

ウェットな人は人情に厚く、心優しい人かもしれない。

ドライな人は沈着冷静で、いざというときに頼りになる人だったりする。

要は、自分の性格をよく知ってその持ち味を活かすこと、同時に同僚や

上司など他者の性格も尊重し、そのうえで良好なコミュニケーションを

築いていくことが大切である。お互いの感情だけが前面にでてしまう形の

コミュニケーションでは、人間関係上のストレス問題が生じることになり

かねない。

自分と相手の性格的な特性を俯瞰し、お互いの長所を大切にするコミュニ

ケーションを意識して実行することが肝要である。

 

<参考文献>

 

消費者庁ホームページ「食品表示法」

神奈川県警察ホームページ「万引き防止のガイドライン」

「健康づくりのための睡眠指針検討会報告書」厚生労働省

「小売業におけるストレス対処への支援」厚生労働省

 

 

 

この続きは、次回に。

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