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書籍「すごい物流戦略」DHL④

● 自宅玄関先だけでなく、多様な場所・方法での受け取りを可能に

 

次にeCommerce Parcelについて、です。

 

ドイツ国内のParcel市場は108億ユーロ(2017年、約1兆4000億円)あり、

そのうち45.4%をDHLが占めていると言われています。34の自動仕分け

センター(Parcel Sorting Center)があり、75ヵ所に機械化配達拠点

(Mechanized delivery base)を設け、8割以上を翌営業日配送(84%)で

届けています。また荷主別の構成では、B2X(B2B、B2Cなど)が90%、

C2X(フリマアプリのようなC2Cなど)が10%となっています。

 

34ある自動仕分けセンターでは400以上の仕分けレーンを設置でき、

1時間当たり5万個を仕分けすることが可能です。

配送センターの動画を見ていて気になったのが、配送コンテナからコン

ベアに荷物を流す作業が思っていた以上にダイナミックに行われていた

ことです。

日本でのていねいできめ細やかな荷物移動を見慣れているだけに、大ざっぱ

なものに見えてしまいました。ただ、米国のFedExやUPSの荷物扱いも

日本と比べて雑ですから、日本が特別(異常)なんでしょうね。

ドイツ国内では、B2BとB2Cとで、Parcel市場の様相が異なります。

いずれもシェアトップはDHLですが、B2B市場の第2位はUPS、B2C市場では

欧州ナンバーツーの宅配会社dpd(ドイツ)が第2位、第3位がHermesと

なっています。

このHermesは、実は、B2C通販会社世界第2位のドイツ・オットー

グループが所有する宅配事業者で、もともとは自社グループの配送を

専門にしてきましたが、他社向けにも配送サービスを開放するように

なり、市場でのシェアを広げています。

自社配送で宅配ノウハウを蓄積した事業者が、Hermesのように、宅配

市場の新勢力として参入してくるという動きは、今後、日本でも出てくる

かもしれません。

例えばアマゾンは日本国内において、スピード配送の「プライムナウ」や

生鮮スーパーの「アマゾンフレッシュ」で、すでに自社配送による実績を

積んでいます。

日本では一昨年(2016年)以来、宅配便の再配達問題が広く取り上げられ、

宅配以外でのEC荷物の配送(宅配ロッカーの活用)が関心を集めています。

ドイツではそもそも再配達というサービスがありませんから、日本の

ように再配達問題は起こりません。ただ、合理性を極めて重視する国民性と

いうこともあり、自宅玄関先以外でも荷物の受け取りに便利な方法があれば、

それらを積極的に利用する傾向があります。

DHLでもそうした動きに対応するため、多様な受け取り方法、受け取り

場所を提供しています。

まず「Paketshop(パケットショップ)があります。

これは街中にある文具店やみやげものショップ、コンビニエンスストア

などが受け取り場所を提供するというもので、DHL以外の荷物の受け取り

場所を兼ねていることもあります。2017年時点で約1万1000のパケット

ショップがありました。

次にDHL専用の受け取りスペースであるRetail outlet。有人対応の受け

取り窓口の代わりに、施設内には受け取りボックスがいくつも設置されて

います。約1万3000の拠点(2017年時点)があります。

Packstationは、日本でもヤマト運輸や日本郵便が設置している宅配ロッカーと

同様のものです。ヤマトの宅配ロッカー(約3400ヵ所)よりも少ない約3200ヵ所

での設置ですが、まだまだ利用率の低い日本と比べて圧倒的に利用されて

いるようです。

現在、ドイツ国内に設置されているPackstationで最大のものは、横幅が

35mもあり、602個の荷物を収納するスペースがあるといいます。

おそらくスマホアプリでどの場所に荷物があるかを知らせてくれるので

しょうが、こんなに大きなスペースで自分の荷物がどこにあるのか探す

のに困らないのだろうかと思いつつ、これだけの規模のものが設置され

るということは、利用者のニーズもそれだけ強いということでしょう。

実際に設置してあるPackstationを見てあらためて気づいたことがありました。

それは「ドイツ人は力持ちなんだな」ということです。

Packstationでは、大きな荷物を出し入れできるスペースが上段にあり、

小さなスペースが下段に集中しています。

日本で見かけるコインロッカーは、重量のあるスーツケースやキャリー

バックが入る大きなスペースは荷物を持ち上げなくてもすむ低い位置に

設けられていますが、ドイツ人にとっては現在の形状が合理的なのでしょう。

それから、DHLでは、最近日本でも新築戸建て住宅の玄関先でようやく

見かけるようになった宅配ボックスタイプのParketboxを2011年から販売、

またはレンタルで提供しています。DHLの荷物しか受け取れないことから

まだ800程度しか設置されていないようですが、今後DHLが取り扱い荷物を

増やしていこうという戦略があるのであれば、それを見越したゆるやか

な顧客の囲い込みということでしょうか。

 

 

 

この続きは、次回に。

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