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書籍「すごい物流戦略」DHL⑤

● 急増するネット通販に対応するための3つの取り組み

 

DHLでは急成長を続けるeCommerceへの対応として、3つの取り組みを

スタートさせています。

 

1つ目が一定エリア内での配送荷物を増やすという「密度増」。

ある顧客(あるいは同じ場所)に対して、一度に1個の荷物を届けるより、

2個、3個にできれば、それだけ配達の密度が上がり、配送効率のアップに

もつながります。

2017年現在で、B2C市場でのDHLの荷物の受け取りポイントは約2万

8000ヵ所あります(Parkstation、Parcelshop、Parketbox、Retail Outletを

含む)。それに対してHermesは1万4000、dpdは6000、UPSは3100にとど

まっており、2位以下の3社を合計しても2万3000ほどにしかなりません。

DHLからすれば、専用受け取りポイントでの受け取りが増えるということは、

個々の家庭の玄関先まで届ける件数を減らすことができ、かつ、例えば

受け取り場所がドイツ国内最大のParkstationであれば、そこには602個まで

ほぼ同時に届けることができるわけですから、圧倒的な配達の「密度増」を

実現することができます。

 

2つ目が「自動化促進」です。

同社は2010年から2016年の間に、配送センターの処理能力を大幅に

アップさせました。

2010年段階で33ヵ所に設置していた自動仕分けセンターは、2016年時点では

計34ヵ所。わずか1ヵ所増えただけですが、個々のセンターの処理能力が

格段に向上しています。

2010年の自動仕分けセンター1ヵ所当たりの平均的な仕分け処理能力は、

1時間当たり2万個で、1日換算で260万個の出荷が可能でした。

それが2016年になると、1時間当たりの処理能力は最大規模のフランク

フルトセンターの場合5万個以上、ニュルンベルクセンターで4万個、

3万2000個レベルが23センター、残りの9センターについても2万8000個と、

平均レベルが底上げされました。1日換算の出荷能力も430万個と大幅に

アップしています。

また2016年には13億個を配送していますが、その50%は自動仕分けされ、

全体の約9割を翌日配送で対応したそうです。

配送センター全体での1時間当たりの処理能力も、2010年の64万個から、

2016年には109万5000個へ、約71%も増加しました。

 

そして3つ目が「BigB増」です。

集荷1ヵ所当たりの取り扱い個数の多いところ(=大手通販事業者や3PL

事業者)を積極的に顧客として取り込んでいくという考えです。

 

これらの3つの対応を見ていくと、DHLが本気でECに対応しようとして

いることがわかります。また、そのくらいの気持ちで取り組んでいかな

ければ、「Strategy 2020」で掲げている目標の達成は難しいということ

なのかもしれません。

翻って日本の状況を見てみると、宅配大手は、日々、加速度的に増えて

いくEC物流に対応するというより、アマゾンを始め、多くのEC事業者や

3PLからの受託に腰が引けぎみです。本来であれば、DHLのようにBigBに

対応するために、宅配インフラを整備し、機能させる必要があります。

ヤマト運輸であれば、ゲートウェィ構想にとても期待しており、この完成には、

宅配の出口である「お届け」の流れを良くする必要があります。

クロネコメンバーズやウケトルなどのサードパーティアプリ、宅配ロッカーの

整備と利用率の向上により、配荷がスムーズになれば、宅急便ネットワークの

キャパシティは大きくなり、大きな成長をすることができるでしょう。

 

 

 

この続きは、次回に。

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