書籍「すごい物流戦略」DHL⑥
● 電気自動車開発の企業を買収し、環境にやさしい配達車を自社で開発
DHLはテクノロジーへの投資に積極的です。つねに最新のロジスティクス・
ソリューションを追求しています。そうした姿勢のブレゼンスを対外的に
高める意味もあり、DHLイノベーションセンターをドイツのボン本社近くと、
シンガポールに設立しています。
同社が現在取り組んでいるイノベーションについて、今回の訪問で見聞き
した事例からご紹介したいと思います。
まずは無人小型飛行機ドローンによる配送システムです。
DHLが初めてドローンによる配送テストを行なったのは2014年のこと
でした。
次なるイノベーションはPostBOTです。
配送荷物を積んだ台車のようなロボット、PostBOTが配達員のすぐ後ろを
ついていくというもので、配達員は手ぶらで配達先まで移動すると
PostBOTに格納された荷物を取り出し、手渡すだけで配達を完了することが
可能になります。
重い荷物を運ぶ労力が軽減されるため、体力的に劣る女性やシニア層でも、
配達員としての仕事をこなせるようになります。
ただし、現状では、段差のある路面でのPostBOTの走行は難しく、現実の
ものとなるまでには、まだ時間がかかりそうです。
一方、DHLが本社を構えるドイツはEUの中でも環境対策に積極的に取り
組んでおり、温室効果ガスの排出量を2020年までに1990年比で40%削減
する目標を掲げています。そんななかでDHLが本格的に開発を目指して
いるのが、「Zero Emission(CO2排出ゼロ)」の配達車です。
その本気度は、電気自動車開発のStreet Scooter社を買収してしまった
ことからもわかります。現在、年間1万5000台規模の量産体制にあり、
配達車として路上走行を開始しています。DHL自らが使用していくのは
もちろん、他社への販売も検討しているそうです。
電気自動車以上に環境にやさしい配達車の開発も進めています。
荷台を載せて人力で前乗り走行するCubicycleです。
また指定の車を荷物の受け取り場所にする「In car Delivery」にもチャ
レンジしています。
スマホアプリと電気自動車のsmartを連動させ、駐車場の車の宅配ボックス
代わりに活用するというもので、社内的には「ready to drop」と呼んで
います。現在はドイツ国内での試みですが、今後は海外でのトライアルも
視野に入れています。ちなみに同じような取り組みが、AudiやVolvoでも
進められ、米国ではアマゾンが本格的に取り組むと言われています。
この続きは、次回に。