Coffee Blake-令和3年7月4日(日)「早稲田会議」⑥
Roundtable D
コーポレートガバナンスによる企業の競争力
AGG会長/島村 琢哉、J-オイルミルズ社長/八馬 史尚、
清水建設社長/井上 和幸、大和証券グループ本社会長/日比野 隆司、
日本交通会長/川鍋 一朗、日本電気会長/遠藤 信博、
ブラザー工業会長/小池 利和、早稲田大学ビジネススクール教授/川本 裕子、
早稲田大学総長/田中 愛治、
向上のためのガバナンス
企業の最も重要な使命は「継続性」である。
それは社会を発展的に継続させるために新しい価値を創造し続け、自らも
成長を維持することだ。はたして国策でスタートしたコーポレートガバ
ナンスコードはそれをけん引していると言えるだろうか。
たしかに社外取締役の導入や取締役の規模縮小など形式的な体制は整い、
持ち合い株式も減少した。社外から得られる刺激や知見が集まる環境と
なり、事業の正当化やダイバーシティーの推進やリスクヘッジには大きな
効果が得られている。
しかし、多くの経営者がそれを実践しながら違和感を持っている。
いわゆるグローバルスタンダードに「ならう」という形で導入が進んだ
コーポレートガバナンスコードはソフトローであるにもかかわらず、各社の
社外取締役ポートフォリオが同質化するなど、多くの企業が画一的な
統治体制に陥ってしまっている。歴史の浅い企業と100年の歴史を持つ
企業が同じガバナンスで本当に機能するのか。形式やルールを順守しても、
一向に社内へ浸透しない原因もその点にある。
企業は独自の考えで自社の文化を生かすガバナンスへと改革を試みるべきだ。
それぞれの企業の経営スタイルには良い点があったはずだ。
日本企業の多くは「三方良し」というマルチステークホルダーを重視する
ビジネスを展開してきた。ESGの流れは本来の経営に近しいが、社会が
混乱するいまはさらに踏み込んで「全方良し」を意識した「我が社流」を
模索する時だ。ガバナンスに正解などない。ベストな選択を求めて改革を
繰り返しながらそれを磨き続けることが正しい在り方で、その度に経営陣は
アントレプレナーシップを取り戻すことができる。
リーダーが現場に足を運び、改革の意図や目的を語り合うことでガバナンスは
機能する。夢や不安を一人ひとりと語り合うことは経営の神髄であり、
そうした個の評価をどれだけきめ細やかにできるかが企業の成長に大きく
影響する。リーダーの言葉で人の流動性やダイパーシティーの大切さなどを
説いてこそその理解は広まる。一方で、リーダーも現場との対話の中で、
若者たちのSDGsやESG経営に対する高い意識を実感するはずだ。
彼らと共に人生100年時代の働き方やそのためのビジネスの在り方を
模索しようとするなら、その糸口は現場にある。
● コーポレートガバナンスコード
corporate governance code. 上場企業が守るべき企業統治の行動規範。
企業家精神に富んだ経営を行い、利益を長期的成長につなげたり、
従業員や株主へ還元したりするよう促すため、取締役会のあり方、
役員報酬の決め方などを定めた指針である。
● リスクヘッジ
リスクヘッジとは、起こりうるリスクの程度を予測して、リスクに対応
できる体制を取って備えることです。 単にヘッジと呼ぶこともあります。
例えば、資産運用において、資産価値が一方的に下落することを最小限に
食い止めるために、先物取引を使ってリスクを回避する方法があります。
● グローバルスタンダード
世界標準(せかいひょうじゅん、英: international standard)または
グローバルスタンダード(英: global standard)とは、技術分野における
国際工業規格・国際会計基準など、準拠すべき枠組みとして国際的に一定の
拘束力を持つ標準、規格、規則を示す語である。
● ソフトロー
主として国際法上の概念で,拘束力が緩やかな法,ないし実質的に何らかの
法的拘束力のうかがえる非法的規範のこと。生成中の国際法ともいえる。
典型的には〈努力義務〉規定や〈紳士協定〉など。特に国家の憲章類や
国連の決議や文書,国際会議の最終宣言などが問題となる。
例えば〈世界人権宣言〉は現在ではソフト・ローとして認められていると
される。また地球サミットで採択された〈リオ宣言〉についてのように,
国際環境法分野でこの概念が用いられることが多い。
国際法の規範体系を脆弱化するものだという批判もある。→関連項目国際法
● ポートフォリオ
Portfolio(ポートフォリオ)とは、日本語に直訳すると「紙ばさみ」
「折りかばん」「書類入れ」という意味です。
つまり「書類を運ぶためのケース」のことを表し、個々の書類を別々に
扱うのではなく、書類全体をひとつの物として扱うという意味を持って
います。一見、バインダーやファイルと似たようなニュアンスに聞こえ
ますが、これらは正確に言うと「書類を糸などで綴じる」という意味を
持つことから、ポートフォリオとは若干の違いがあります。
ポートフォリオの本来の意味は、そのファイルにきれいに綴じられる
前段階の紙書類をひとまとめにして、運びながら出し入れできるケース、
といったイメージです。
● 三方良し
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」。
売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売で
あるということ。近江商人の心得をいったもの。
● マルチステークホルダー
マルチステークホルダー・プロセスとは、3者以上のステークホルダーが、
対等な立場で参加・議論できる会議を通し、単体もしくは2者間では解決の
難しい課題解決のために、合意形成などの意思疎通を図るプロセスで
す。
この続きは、次回に。