田中角栄「上司の心得」㊶
・問われる部下への「けもの(獣)道」伝授能力
どんな優秀な部下でも、時に仕事で行き詰まった、私生活でニッチも
サッチもいかなくなった、もはやお手上げという場面がある。
こういうときこそ、上司の出番である。なお人材として育てきれるか、
潰してしまうか、上司として物事の〝抜け道〟を教えられる能力が問わ
れるということである。
ここで言う〝抜け道〟とは、山や森でサル、シカ、イノシシなどの野生
動物が通ることで、自然につけられた道を指す。
動物たちはこの道をたどり、餌を求めて人里の田畑に出てくる。
人が山中で迷ったら、この道を辿っていけば、九死に一生を得るという
ことである。
田中の大蔵大臣時、部下に主税局税制第一課長の山下元利という人物が
いた。山下は人物はこれ真面目で、苦学力行で東大を出、大蔵省に入った
男である。ところが、仕事上である〝とんでもないミス〟を犯し、これが
縁で田中とつながりができ、のちに田中の手引きで政界入りをすることに
なる。政界入り後は、やがて防衛庁長官を務め、田中が天下を取ったあと、
終生、田中のあのときの恩義に報いたのである。
田中が病魔に倒れ、田中派が事実上の竹下(登)派へと衣替えされていく
中で、これに同調せず、孤高の無所属としてなお「田中派木曜クラブ」の
旗を守ったのだった。
● ニッチもサッチも(二進も三進も)
《そろばんの割り算から出た語で、計算のやりくりの意》物事が行き
詰まり、身動きのとれないさま。どうにもこうにも。
「借金が増えすぎて二進も三進も行かない」
● お手上げ(御手上げ)
《両手を上げて降参する意から》解決する手段が全くないこと。
どうにもしようがないこと。「騒音対策はお手上げの状態だ」
● 九死に一生を得る
十のうち九まで死ぬと思われていたなかで、やっとのことで生きながら
えること。 万事休すの状況から、なんとか助かること。
● 万事休す
《「宋史」荊南高氏世家から》もはや施す手段がなく、万策尽きる。
もはやおしまいで、何をしてもだめだという場合に使う。
[補説]「万事窮す」と書くのは誤り。
● 苦学力行
苦労して学問をし、努力すること。
● 手引き
導くこと。
● 恩義に報いる
「恩義に報いる」は、良くしてもらったことのある相手のためになる
ことをする、恩返しをする、返礼する、義理を果たす、といった意味を
持つ言葉です。 過去に助けてもらったり、協力してもらったり、贈り物を
いただいたりした相手のために、何かをしたり、何かを贈ったりすること
などが挙げられます。2019/01/06
● 病魔
病気を魔物にたとえていう語。「病魔に冒される」
● 衣替え
飾りつけをすっかり替えたり、商売を替えたりすること。
「クリスマスをひかえて商店街がすっかり―する」
● 同調
他に調子を合わせること。他人の意見・主張などに賛同すること。
「彼の提案に同調する」
● 孤高
俗世間から離れて、ひとり自分の志を守ること。また、そのさま。
「孤高を持 (じ) する」「孤高な(の)人」
この続きは、次回に。