実践するドラッカー[思考編] ⑤
A lesson from P.F.Drucker
∵ 体系的な作業
頭のよい者がしばしばあきれるほど成果をあげられない。
彼らは頭のよさがそのまま成果に結びつくのは体系的な作業を
通してのみであることを知らない。 (中略)
それらの資質を結果に結びつけるには、成果をあげるための
能力が必要である。
『経営者の条件』—–p.18
私たちは、よく物を知っている人のことを「頭のよい人」といいがちで
ある。しかし、私たちは多くの場合、知識を得ているつもりで、単に情報を
得ているだけである。ドラッカー教授のいうように、本の中にあるのは、
知識ではなく情報なのです。
例えば、自己啓発書を読んだり、セミナーを聴いたりすると、「よし、
私も」と高揚感が生まれます。しかし一か月後、何か変化は起きている
でしょうか。ほとんどの場合、何も変わっていないはずです。
それは、情報という素材を仕入れただけで、何の調理もしていないから
です。
情報は、調理して初めて知識に変わります。調理の経験を何度も積んで、
腕が上がると、やがて成果を上げられるようになるのです。
読書やセミナーは素材を仕入れるという意味で重要ですが、前項で紹介
した「五つの能力」を身につけ、実践や行動の質を向上させなければ、
成果にはいたりません。
ドラッカー教授は、この一種の行動を、「体系的な作業」と表現しています。
知識から成果を生み出し、唯一の方法です。
A lesson from P.F.Drucker
∵ 習慣化する
成果をあげる人に共通するものは、つまるところ成果をあげる
能力である。(中略)
成果をあげることは一つの習慣である。
実践的な能力の集積である。
実践的な能力は修得することができる。
『経営者の条件』—–p.42
ドラッカー教授は、「成果をあげる能力」は修得できるといいます。
それは希望のもてる話なのですが、残念ながら学校では教えてくれません。
つまり、社会に出てから、仕事を通して身につけていくしかないのです。
幸いなことに、一つひとつの能力は、理解しやすいものです。
例えば、時間管理については、具体的な方法までははっきりと示されて
います。
問題は、「行動」です。多くの挫折がここで生まれます。
最大の原因は、その必要性を真に理解していないことでしょう。
それゆえ心の底から納得できず、行動に写せないのです。
また、行動に移したとしても、長続きさせることはさらに難しい。
納得を心に刻んだ状態を維持できず、三日坊主が世にあふれることに
なります。
行動だけを変えることは不可能です。まずは思考を変え、納得したうえで、
行動を変える。そのサイクルを繰り返すうちに、頭で考えなくても無意識に
行動できるようになります。それが「習慣化」された状態です。
「成果をあげる能力」とは、いくつかの能力が集まった総合的な力です。
一つひとつ習慣を増やしていれば、いつしか必ず大きな成果に結びつきます。
この続きは、次回に。