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実践するドラッカー[思考編] ⑥

A lesson from P.F.Drucker

 

∵ 働く動機

 

 

知識労働者は生計の資だけの仕事では満足できない。

彼らの意識と自負は、知識人としての専門家のものである。

彼らは、知識をもって何事かを成し遂げることを欲する。

したがって知識労働者には挑戦の機会を与えることが不可欠である。

『断絶の時代』—p.296


 

知識労働者は、自らを仕事に向かわせる「動機づけのメカニズム」を

知らなければなりません。ドラッカー教授の名著『現代の経営』にある

中世ヨーロッパ時代の逸話を材料に考えましょう。

ある人が工事現場の脇を通りかかり、汗を流して働いている数人の石工に、

「何をしているのか」と問いかけました。

 

一人目の人は、こう答えました。

    「これで食べている」と。

 

二人目は、手を休めずに答えました。

   「国で一番腕のいい石工の仕事をしている」と。

 

最後の一人は、目を輝かせて答えました。

   「教会を建てている」と。

 

『現代の経営』の逸話はここで終わっていますが、この工事現場の一番

奥には、こう答える石工がいました。

    「この地域の心の拠り所をつくっている」と。

 

このように、世の中には金銭を目的に働く人がいれば、能力を高めるために

働く人もいます。教会に匹敵するビジョンを心に描いて働く人や、働く

動機はさまざまです(後出のコラム参照)。

知識労働者については、「仕事の報酬は、仕事」が最大の動機だといえます。

仕事で評価を受け、より高いレベルの挑戦の機会を得ることで奮い立ち、

さらなる成長が促されます。そのために知識労働者は、常に自らなすべき

ことを問い、また、自ら学ぶべきことを問い、また、自ら学ぶべきことを

問うのです。

 

コラム 働く動機はさまざま

 

働く動機は、さまざまです。手段的な動機、自分自身に根ざす内的な動機、

外部の者を対象とした動機などがあり、同じ人でも、キャリアとともに

動機が進化していくこともあります。

 

● 手段的な動機

 

—今日の糧、お金、地位、名声など

  ・子供にいつか留学をさせたいので、年収をもう少し増やしたい

  ・レストランの開業資金として1000万円貯めたい

  ・リーダーシップを磨くため、部長職に就きたい

  ・将来政治家になるため、この仕事で自分の知名度を上げたい

 

● 自分自身に根ざした内的な動機

 

—-スキル、知識、やりたいこと、好きなこと、経験、成長、

   自らの天分など

 

  ・家業の飲食店を継ぐため、有名店で調理の技を磨きたい

  ・お金はいつでも稼げるので、いましかできない経験を積みたい

  ・生活の安定した仕事より、本当に好きなことで食べていきたい

 

  例 本業が医者で副業が漫画家だったが、生活の安定した医師の

    道より、描きたい漫画の道を優先させた手塚治虫氏

 

● 自分以外の者を対象とした動機

 

—-他者への感謝、仕事、使命、恩や期待に報いる、大志、社会的に

   価値のある目的など

 

  ・マッサージという仕事を通じて、お客様が癒された顔を見たい

  ・親や先生、先輩から教えてもらったことを、教師という仕事を

   通して若い人たちに還元したい

  ・そのときの社会で、真に必要とされている仕事に就きたい

 

          例 「貧しい人たちの中でも最も貧しい人たちに仕える」と

     奉仕の仕事に尽くしたマザー・テレサ氏

 

          例 太平洋の架け橋となるべく米欧に留学し、国際連盟事務次長を

                   務めた新渡戸稲造氏

 

 

あなたの働く動機は、何ですか?

 

どんな動機をもった人と、

               一緒に働きたいですか?

 

 

 

この続きは、次回に。

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