実践するドラッカー[思考編] ㉕
Chapter4∵強みを生かす
わずか数十年前までは、ほとんどの人にとって、自らの強みを知っても
意味がなかった。生まれながらにして、仕事も職業も決まっていた。(中略)
ところが今日は、選択の自由がある。したがって、自らが属するところが
どこであるかを知るために、自らの強みを知ることが必要になっている。
(『明日を支配するもの』—-p.194)
社会には数多くの仕事や職業がありますが、すべての役割を果たし、仕事を
こなせる全能の人はいません。
役割や仕事があっているかは、その人の個性によって決まります。
その人の強みや仕事の仕方、価値観が、組織とその仕事にあったとき、
組織に大きな貢献をもたらします。
自分の強みをよく知らなければ、どんな組織や仕事が自分に向いている
のかがわかりません。自分の強みは何か、強みを発揮し貢献できる場所は
どこか。現代の組織社会では、自らの働く場所は、自ら選ぶのです。
強みを知り、生かすということを掘り下げて考えていきましょう。
● 全能
どんなことでもできること。完全無欠な能力。「全知全能の神」
A lesson from P.F.Drucker
∵ 強みは知識を貢献に変える
強みを生かす者は仕事と自己実現を両立させる。自らの知識が組織の
機会となるように働く。
貢献に焦点を合わせることによって自らの価値を組織の成果に変える。
『経営者の条件』—p.227
ドラッカー教授は「知識こそが事業である」といいます。
知識や個人によって組織にもたらされ、貢献という形で組織に集積されて
いきます。したがって、個人のもつ知識こそが、事業成長の源泉なのです。
例えば、世の中にあふれる食材からいいものを、できるだけ適切な価格で
仕入れる。タイミングよく注文する。物品物を検品する。
こうした一人ひとりの知識が貢献という束になり、顧客に届く。
そのつながりが「バリューチェーン」です。
しかし、成果をあげるには、知識や専門スキルだけではなく「成果を
上げる能力」が必要になります。強みを生かす能力も、その一つです。
例えば、ノコギリの使い方やコツを知っていても、木を切ることしか
できません。構想力や計画性などの強みを生かす力があってこそ、家を
建てることができます。
強みを発揮すればするほど、仕事の価値は大きなものとなります。
仕事において大きな貢献をなす者は、日々自信を積み重ね、さらなる成長を
目指すようになります。こうして仕事と自己実現が両立します。
ドラッカー教授いわく、現代では、私たちの働く期間は五○年に及びます。
自分の強みを知る人だけが、生き生きと働き続けることができるのです。
● バリューチェーン
バリューチェーンとは、原料の調達から顧客に商品が渡るまでの一連の
流れを「価値の連鎖」としてとらえ、商品やサービスにどのような価値が
加わっているかを明らかにするフレームワークです。
ハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授によって提唱
されました。 競合とのバリューチェーンを比較し、強み・弱みを分析
することで、事業戦略の改善などに役立てることができます。
この続きは、次回に。