「人を動かす人」になれ! ⑪
14.「失敗は必ず解決策を一緒に連れてくる」
日本流の責任のとり方といえば、「辞める」「辞任する」というのが
一般的になっている。たしかに、政治家やプロ野球の監督のように、
もう一回が許されない立場があるのも事実であろう。
しかし、法を破ったり、不正や不当なことを行ったというのであれば
話は別だが、仕事で失敗した管理者が「辞める」と口をするのは筋違いだ。
辞めるというのは潔い行為でも何でもない。それどころか、やりかけた
ことを途中で放り出してしまう無責任極まりない行為だ。
もし、何か失敗をしたのであれば、これを成功によって覆すのが本来の
責任のとり方である。
「失敗は成功のもと」ということわざがあるが、すべての失敗が次の成功に
結びつくわけではない。
失敗したことを反省し、やり方を変えて再チャレンジしてみるから、
成功する可能性が高くなるのだ。つまり、失敗の後の反省なしに成功を
手に入れることはできない。だから辞めるというのは、むしろ反省したく
ないといった開き直りにも等しい行為だと私は考えている。
新しい仕事、新しいチャレンジには常に失敗がつきまとう。
この失敗を恐れていては、会社にも、その人自身にも未来はない。
したがって、新しい計画が失敗に終わったのであれば、その原因が経験
不足にあったのか、能力不足にあったのか、それとも別の要因なのかを
すみやかに究明し、その原因や要因を取り除くことができるのかどうかを
検討する。そして、再チャレンジしてみる価値があるのかどうかも含めて、
成功に導くための提案を行なってトップの指示を仰ぐというのが、自覚を
持ったリーダーの責任のとり方である。
わたし自身これまでに、特に若いころには数え切れないぐらいの失敗が
あった。そのたびに反省し、「二度と同じ失敗は繰り返さない」と心に
誓って再チャレンジを試みた。そこで得たのが「失敗は必ず解決策を一緒に
連れてくる」という教訓である。つまり、失敗から目をそらさずに、
むしろこちらから失敗の中に飛び込んでいけば、必ず解決策を見つける
ことができるということだ。
しかも、こちらから失敗に近づいていくと、失敗をしないコツ、秘訣も
わかってくる。責任が重くなればなるほど、失敗や判断ミスは許されなく
なる。そういった面でも、致命傷にならない程度の失敗なら、若いときに
一度でも多く経験すべきだと思う。
失敗を宝の山にするのか、ゴミの山にするのかは本人の心がけ次第。
このあたりも、部下たちは注意深く観察しているものである。
この続きは、次回に。