「人を動かす人」になれ! ⑳
23.相手のキャリアによって話の内容をアレンジする
経営者は明確なポリシー、信念、不退転の決意を伝えることによって、
多くの社員を動かしていかなければならない。この土台がぐらついて
いるようでは説得力がないし、権力を行使して有無をいわさず無理やり
やらせるというのは時代に逆行している。
そのポリシー、信念、決意の伝え方だが、誰に対しても同じであっては
隅々にまで浸透していかない。やはり、相手に合わせて話の内容、表現
方法、話すときの態度も変えていく必要がある。まず、内容については、
相手のキャリアに応じて次のようにアレンジするというのが私の考え方だ。
・一般社員には危機意識三○%、夢やロマン七○%
・主任クラスのリーダーには危機意識五○%、夢やロマン五○%
・部課長クラスの管理者には危機意識七○%、夢やロマン三○%
・役員クラスには危機意識九○%、夢やロマン一○%
たとえば、いまの日本の経済状況についてのとらえ方といったテーマを
取り上げるのであれば、一般社員向けには危機感をあおるような内容は
できるだけ避けて、夢の持てるテーマを中心に話を進めていく。
具体的には「日本の経済が少々おかしくなったとしても、やることさえ
きちんとやっていれば大丈夫。むしろ同業他社が消極的になっているので、
シェアを伸ばす絶好のチャンスだ」といった伝え方をする。
表現もわかりやすい言葉を選んで、笑顔も絶やさない。
このようにする理由は、トップが直接一般社員に危機感を強く訴えすぎると、
社内や職場に悲壮感が漂い始めて自信を失わせたり、積極性や意欲に
歯止めをかけてしまうなど、かえって逆効果になってしまうからだ。
だが、これが管理者、役員クラスとなると、取引先の与信管理は万全か、
回収の面で問題は発生していないか、円安に対する対策は、国内、海外の
マーケットはどのように変化しつつあるのかといったように、ストレートに
核心に触れ、問題点をピックアップして対応策を提案させて、即決していく。
内容をとことんシビアにすることによって、危機感を前面に押し出していく。
このように幹部に危機感を植えつけていけば、自然に下に伝わっていくので、
あえて一般社員にはトップが強調する必要はない。
こうした使い分けをできるかできないか、これで人や組織が動くか動か
ないかが決まる。
この続きは、次回に。