「人を動かす人」になれ! ㊴
43.部下には得意なことだけやらせておけ
固定観念にとらわれすぎると人は動かせないし、多くの人材をダメにして
しまうことにもなりかねない。
たとえば、一流大学を出た技術者にはすばらしい開発ができるが、三流
大学出の技術者にはロクな開発ができない。
経理担当者は数字に強くないといけない。
営業マンは話し上手で、かなりの強引さも必要などなど。
世間にはこのようなイメージがあるようだが、少なくてもわたしはこう
した固定観念には大きな落とし穴があると思っている。
経営者やリーダーは、世間のイメージや固定観念で判断するよりも、できる
だけ本人の得意なことをやらせて、不得意なことには余分なエネルギーを
注がせないようにすることを優先すべきである。
いくら一流大学の出身であっても、しゃべるのが苦手な技術者にみんなの
前で研究成果を発表させようとすると、何日も眠れない夜を過ごすことに
なる。文章を書くのが嫌いな営業マンに連日レポートの提出を求めたので
あれば、本来の仕事が手につかなくなるのは目に見えている。
これも世間ではよくいわれることだが、自分の不得意なことを克服すると
一回りも二回りも器が大きくなると—–。たしかに一理はあるが、大多数の
人間はそれほど器用ではない。社員の一人一人に苦痛を与えて弱点を克服
させるよりも、得意なことをどんどんやらせて長所をさらに大きく伸ばす。
その社員の弱点は、それを得意とする他の社員にフォローさせる。
これが組織運営の要諦で、人を動かす最重要な事項である。
ただし経営者は仕事の好き嫌いをいってはならない。
会社には社長にしかできない仕事というものがある。
わたしの考えるトップの仕事には、
・会社、すなわちわたしの経営ポリシーをわかりやすく社員に伝える。
・社員の意識を変え、高めていく。
・中長期の経営計画を立てる。
・経営判断、最終決断を下す。
・適材適所を考える。
・マスコミのインタビューなどに応じて、会社のイメージ、知名度をあげる。
といったものがあるが、これら以外の仕事は権限も含めて適任者に委譲
してしまう。社員は各人の得意な仕事に専念し、社長は社長にしかでき
ない仕事に専念する。これこそが強い組織をつくる一番の基本である。
● 固定観念
いつも頭から離れないで、その人の思考を拘束するような考え。
固着観念。
● 一理
一つの道理。一応の理屈。「先方の言い分にも―ある」
● 要諦
物事の最も大切なところ。肝心かなめの点。ようたい。「処世の―」
● 委譲
権利・権限などを他の人・機関に譲って任せること。
「執行権を―する」
この続きは、次回に。