「人を動かす人」になれ! ㊻
50.「ここまでできれば、これだけ優遇する」と明言せよ!
前の職場で過去にどのような輝かしい実績があったとしても、自ら転職を
希望する人物は基本的には負け組である。
たしかに、適性とか向き不向きがあることはわかる。
わたしの性格からすると、銀行に努めたら三日でクビ、官庁なら一日とは
持たないと思う。したがって、三ヵ月、半年で辞めたというのなら話は
別だが、それ以上勤めて適性とか向き不向きがどうだなどとはいえない
はずだ。
同期の出世頭とか並み居る先輩たちを尻目にごぼう抜きで出世している
ような勝ち組は、まずその会社を辞めたりしないはずだ。
また、それほど出世欲が強くなかったのであれば、負け組であることに
変わりはないと思う。
この敗者を勝者に鍛え直すという発想がなければ、中途採用者を戦力に
することはできない。では、どうすれば敗者を勝者にすることができる
のだろうか。その最大のポイントは、前の会社では通用しなかったかも
知れないが、わが社ではこれだけのことができれば立派に通用するんだ
という条件を具体的に明示してやることである。
たとえば、わが社ではかなりの数の元銀行マンを採用しているが、彼らに
対してわが社で優遇する条件を次のように説明する。
「今後銀行も大きく変わっていくはずだが、少なくともこれまでは創造力を
発揮してはいけない、自分の考えを主張しすぎてはいけない、上司の指示を
仰がずに勝手に判断してはいけない、というのが評価の対象だった。
お客に渡すカレンダーのサイズまで各銀行とも同じと決められていたので、
こうした結果になるのは止むを得ない。だが、わが社が優遇するのは
創造力が発揮できて、自分の主張をはっきりと持ち、上司の指示を待つ
のではなく、自分の判断で前向きに物事に取り組んでいける人材だ。
これまでと反対のことをやるのだから、発想を一八○度転換する。
これができないとわが社では通用しない」
このように伝え、「ここまでできれば、これだけ優遇する」と従来の二倍
ぐらいの好条件も同時に提示する。これぐらい思い切った手立てを講じ
なくては、敗者を勝者にすることは不可能だ。
世間では中途採用者を即戦力という呼び方をするが、まず本人に身に
ついた負け犬根性を払拭しなければ戦力とはならない。
わたしはこれだけでも一年や二年は簡単にかかると思っている。
この続きは、次回に。