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「人を動かす人」になれ! ㊿+6

59.五万円の損害だからこそ、五億円叱れ

 

わが社では、大きな目標を持って果敢にチャレンジしたのであれば、たとえ

結果が失敗に終わったとしても評価が下がることはないし、わたしもそんなに

強く叱ったりはしない。だが、とかく見過ごされがちになる細かなこと、

小さなことをないがしろにする行為に対しては徹底的に叱責するという

風土を根づかせている。

一例をあげると、ここに五個だけつくる製品サンプルの設計図がある。

そこにちょっとしたミスでもあれば、わたしはそのミスを指摘して技術の

担当者を徹底的に叱りつける。

こんなとき、たいてい本人は不満そうな顔をする。それでも、わたしは

こんなことが二度とないようしつこく厳重に注意を与える。

これで会社が損をしたとしても、たかだか五万円程度のものだろう。

だからこそ、わたしはこれ以上がないほど叱るのである。

以前、ある経営者にこの話をしたところ、「サンプル五個でそれだったら、

もっと大きな仕事で失敗があれば、どんな叱り方をするのか」と質問された。

わたしは「そうなると、もう叱る叱らないの問題ではなくなるのです」と

答えた。

理由はこうだ。五万円の損害なら少々叱ったところで、技術者もまさか

辞めるとは言い出さない。ところが、これが五万個の製品の設計図なら

五億円の損害になる。こうなれば、その技術者は責任をとって辞めると

いい出すかも知れない。

また、完全に自信を喪失して、その後の仕事が手につかなくなってしまう

恐れもある。そこまで行かなかったとしても、職場に気まずいムードが

流れて、人間関係がギスギスしはじめる。

わたしにとっては、こんなことで大切な社員に辞められたり、やる気を

失ってもらっては困る。むしろこちらの損失の方が、目先の金銭的な損失

よりもはるかに大きいと考えている。だから、五万円の損害のときに

五億円分叱るというところにつながっていく。

会社が倒産するときには必ず前兆や兆候がある。

連鎖倒産を除けば、昨日まで順調にやっていた会社がいきなり次の日に

つぶれてしまうようなことは、まずあり得ない。

社員や部下も同じで、普段の小さなミスや失敗を見逃しておくから、やがて

致命的な失敗が起こるのである。これも経営者や管理者が人を動かすうえで、

肝に銘じておかねばならない重要なポイントである。

 

● 果敢

 

決断力に富み、物事を思いきってするさま。「―な行為」「勇猛―」

 

● 喪失

 

うしなうこと。多く抽象的な事柄についていう。

「資格を―する」「権威―」「記憶―」

 

● 前兆

 

何かが起こる前に現れるしるし。まえぶれ。きざし。

「噴火の―」「不吉な―」

 

● 兆候

 

物事の起こる前ぶれ。きざし。前兆。「景気回復の―がみえる」

 

● 連鎖倒産

 

取引先の倒産で不良債権が発生した企業が、その影響で倒産すること。

親会社に子会社が連鎖する場合や、大企業の倒産で下請けや取引先が

全国規模で連鎖倒産したケースもある。

 

 

この続きは、次回に。

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