「人を動かす人」になれ! ㊿+11
64.人は「怠けるカメ」と思え。
わが社には、「倍と半分の法則」というのがある。
モーターメーカーとしては後発組で、実績も信用もない。
もちろん人手もないし、設備もなければ資金もない。
こんな、ないないずくめの会社が、大手の同業他社と競争して一つでも
勝てるものはないかと考えたときに、思い浮かんだのが時間であった。
一日二四時間というのは、国内のどんな大企業でも、海外の企業であろ
うと条件は同じだ。この時間を有効に活用することさえできれば、何とか
勝負になるのではないか。ここから生まれたのが「倍と半分の法則」で
あった。
つまり、他社が八時間働いているのなら、わが社は倍の一六時間働く。
そうすれば、他社のセールスマンが得意先を一回訪問する間に、われ
われは二回訪問できる。また、他社の納期が二ヵ月かかるなら、われ
われは一ヵ月で納めることが可能になる。
要するに、求められるものは半分で、与えるものは倍というのがこの
法則の精神で、わが社の伝統として今も受け継がれている。
この考え方は、ほとんど苦労らしい苦労もしないで育ってきた、今の
若い社員の忍耐力を養うときにも応用できる。
忍耐力、辛抱というのは時間との戦いでもある。
「ウサギとカメ」の話がある。足の速いウサギとのろまのカメが駆けっこを
して、油断したウサギが途中で眠ってしまい、休みなく歩み続けたカメが
追い抜いて勝利したという誰でもご存知の物語だが、現実にはウサギが
眠っているときに同じように眠ってしまうカメが大多数なのだ。
だから、人を動かすにしても、動かす前に「怠けるカメ」を「怠けない
カメ」にしておかなければ徒労に終わってしまう。
最初は、始業時間よりも五分でも一○分でも早く出勤させるようにする。
五分早く出てこられるようになったら、もう五分早くする。
さらにもう五分、もうあと五分だけと自覚ができるまで繰り返していく。
わたしの経験からいっても、これが意外と効果がある。
やる前には、仕事が残っていてもさっさと帰ってしまっていたようなもの
でも、「もう五分」「あと五分」を続けていると、半年ぐらいで自主的に
残業をやるようになる。あるいは、根気が持続せずにいろんな物事を途中で
投げ出してしまっていたような者でも、やりかけたことは最後までやり
通すようになる。
できるだけ若いうちにこういった訓練をやらせておくことが、「怠けない
カメ」の集団をつくり上げていく大きなポイントである。
● 忍耐力
忍耐力とは、「忍んで耐える力」のこと。 「忍ぶ」には「つらいことを
我慢し、黙ってじっとこらえる」意味があります。
そのため、「忍耐力がある」というアピールは「言いたいことがあっても
我慢して、理不尽や不条理に耐えることができる」「保身の道を選んだ」
と捉えられることもあります。2020/01/27
● 辛抱
つらいことや苦しいことをがまんすること。こらえ忍ぶこと。
「もう少しの―だ」「この店で一〇年間―してきた」
● 徒労
むだな骨折り。無益な苦労。
「せっかくの努力が―に帰す」「―に終わる」
この続きは、次回に。