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「人を動かす人」になれ! ㊿+40

95. 鍛え直し、上昇志向を植えつけるのがリーダーの仕事

 

ハングリー精神や大きな夢を持った若者が少なくなっていることは、

再三述べてきた。しかし、考えてみれば、昭和一九年、貧しい農家の

六人兄弟の末っ子に生まれ、物心がついたころにひもじさと欲しくても

買ってもらえないというジレンマをたっぷりと味わったわれわれの世代と、

幼いころから欲しいものは何でも与えられ、チヤホヤと甘やかされて

育ったという環境に大きな違いがあり、仕方がないとは思う。

しかし、わが社に入社した以上は彼らを鍛え直し、上昇志向を植えつけて

いくのがわたしの仕事である。

「世の中の競争なんて、鼻先三分の差ぐらいでしかない。勝つのはそんな

むずしいことではない。人よりちょっとだけ努力したらいい」と、彼らを

相手にわたしは話をはじめる。さらに、「会社でも個人でも相手の力が

少しだけ上なら、時間で勝負すれば勝てる。つまり、相手が夕方の六時

まで仕事をしているのなら、こちらは六時半まで、相手が八時までなら

われわれは八時半まで働く。そうやってわが社はライバルとの競争に

勝ってきた」と続ける。

これは事実である。モータのメーカーとしては後発、人手も、設備も、

資金もないところからスタートしたわが社は、ライバルと互角に競争

できるのは時間だけ。それなら時間だけでも勝とうと、他社の二倍の

時間働くことを実践した。

「できませんとか、無理です、面白くない、やりたくないといった否定的な

言葉、消極的なフレーズはできるかぎり使わないように心がけるだけで、

ユーザーや上司、そして後輩からのウケもよくなって、仕事も人生も

拓けてくる」と、わたしの声も一段と大きくなる。

「もう一つ大切なことは、人の心を知ること。自分の立場でしか物事を

考えられないと人間は、誰ともうまくやっていけないから、何をやっても

失敗するのがオチ。後々後悔しないためにも人の心がわかる、人の気持ちを

汲み取る訓練をしておく必要がある」

三○名ほどの若手社員を集めての社内研修会の様子を再現してみたが、

いまの若い人にハングリー精神を植えつけたり、人の立場で物事を考えて

いく習慣を身につけさせることは本当にむずかしい。

気が遠くなりそうなぐらい道のりは長い。

「成功するかしないかは、結局は自分に克てるかどうかで決まる。

もう、これでいいとか、明日があると思った途端に土俵の外に押し

出されてしまう。勝負というのはこんなものだ」と若手社員に訴えつつ、

わたし自身にも同じことをいい聞かせる。

一回でも通じなくても、一○回やれば—–、一○回でダメなら二○やると

いうのが、わたしの信念であり、執念でもある。

 

● ハングリー精神

 

物事を強く求め、達成への強い意志を持ってことに当たる気持ちや

心意気などを意味する表現。

 

● ひもじさ

 

空腹である。 飢えている。 ひだるい。

 

● ジレンマ(dilemma)

 

二つの相反する事柄の板挟みになること。「―に陥る」

 

● フレーズ(phrase)

 

1. 句。成句。「キャッチ―」

2. 音楽で、楽句

 

● 成句

 

1. 慣用句のこと。「顔が広い」「足を洗う」など。

2. 古くから広く世間で習慣的に用いられるひとまとまりの言葉。

  「猿も木から落ちる」「時は金 (かね) なり」などのことわざ

    格言の類。成語。

 

● 拓ける

 

拓ける」は、(ひらける)と読みます。 未開拓の土地、分野などを

自分の力で切り開く、開拓する、という意味の言葉です。2019/12/23

 

● 克てる

 

競争相手を負かす。 勝利を得る。

 

● 信念

 

正しいと信じる自分の考え。「―を貫き通す」「固い―」

 

● 執念

 

ある一つのことを深く思いつめる心。執着してそこから動かない心。

「―をもってやり遂げる」「―を燃やす」

 

この続きは、次回に。

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