「人を動かす人」になれ! ㊿+41
96.世間の常識に押し流されるな
世間の常識にとらわれていては、会社の経営はできないというのが実感
である。最近よく耳にするのが、価格破壊で売値が下がったために利益が
大幅に落ち込んだといった声だ。だが、わたしはそうは思わない。
価格が下がれば、当然競争相手が減る。競争相手が減ると確実に利益は
大きくなる。
身近な例をあげると、現在飲食業で儲かっているのはマクドナルド、
吉野家、そして回転寿司で、どの店もお客があふれている。
マクドナルドはさらに価格を下げるようだし、吉野家は消費税の導入後も
料金据え置きになっているので、実質値下げだといえる。
京都でもいくつかの寿司屋が回転寿司に鞍替えをし、寿司の値段が下げた
にもかかわらず、売上や利益も大幅にアップしている。
要するに、価格破壊で利益が落ち込んだというのは言い訳にすぎない。
こうした例はいくらでもある。たとえば、重役出勤。
世間では社員よりも遅く会社に来て、早く変えることのようだが、経営
トップがこれでは会社はすぐに倒産してしまう。重役出勤というのは、
社員よりも早く出社して遅くまで働くのが本来の姿である。ほかにも、
銀行の貸し渋りや資金の引き上げが問題になっているが、多額の不良債権を
抱えているから金を貸さないといっている。これが世間の常識らしいが、
どう考えても素人のわたしには理解ができない。
どのような事情があるにせよ、銀行は金を貸すことで利益をあげている。
これを放棄して不良債権の処理が本当にできるのであろうか。
それはさておき、わが社が新卒者の採用試験で昼食を早く食べた順に合否を
決めたり、トイレの掃除をさせて採用したとき、世間からは何と非常識な
会社だと後ろ指を差された。また、バブルの最盛期を迎えても「ハード
ワーキング」の看板を下さなかったために、時代錯誤もはなはだしいと
いろんな方から忠告を受けた。もし、あの時にわたしの信念が揺らぎ、
世間の常識に押し流されてしまっていたなら、恐らく現在の日本電産は
なかったであろう。当時を知っている社員とたまにこんな話題で盛り
上がることもあるが、世間の常識に真っ向から対峙し、信念を貫き通した
結果が「吉」と出るたびに彼らとの絆は確実に深まっていく。
信念なき経営、世間の誤った常識に惑わされるような経営者のもとから、
人は離れていくのだと思う。
● 後ろ指を差される
当人の気づかぬところで陰口をたたかれることをいう。
● ハードワーキング
英語のhard workは「勤勉、一生懸命力を注ぐこと」という意味で、
スポーツであれば、試合に限らず、日ごろのトレーニングなどを欠か
さず、努力することを指します。2019/07/09
● 時代錯誤も甚だしい
時代の異なるものを混同して考えること。 また、考え方や行動などが
時代の流れに逆行していて合わないこと。 時代遅れ。 アナクロニズム。
● アナクロニズム(anachronism)
その時代の傾向と食い違っていたり時代遅れであったりすること。
時代錯誤。
● 対峙
山などが向かいあってそびえ立つこと。 また、人や軍勢など、対立する
双方がにらみ合ったまま動かないこと。
この続きは、次回に。