お問い合せ

ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊴

これは前述の頭取の時間の使い方である。月曜と金曜に、現業関係の会議を

開き、日常の問題について幹部と相談し、重要な客に会っている。

火、水、木の午後は、予期できない仕事のために空けている。

急な人事、海外の支店長の帰国、重要な来訪、ワシントンへの出張などで

ある。そして火、水、木の午前中は、それぞれ一時間半に分けて重要な

問題に取り組むことにしている。

 

もう一つ、かなり使われている方法が毎朝自宅で仕事をするという方法で

ある。

 

S・カールソン教授の調査によれば、ある非常に仕事のできるエクゼク

ティブは、毎朝出勤前の一時間半、電話のない書斎で仕事をしていると

いう。

時間どおりに出勤するにはかなり早く起きなければならない。

しかし、この方法は、夜仕事を持ち帰って、夕食後三時間仕事をすると

いう一般的な方法よりははるかによい。夕食後では、たいていの者は良い

仕事をするには疲れすぎている。特に中年以降は早く寝て早く起きたほうが

よい。しかも自宅で夜仕事をすることを一般化すること自体がよろしく

ない傾向を生む。昼間の時間の管理に取り組むことを避ける口実を与えて

いる。しかし時間をまとめるための具体的な方法よりも、時間に対する

アプローチのほうがはるかに重要である。

ほとんどの人は、二次的な仕事を後回しにすることによって自由な時間を

つくろうとする。しかしそのようなアプローチではたいしたことはでき

ない。心の中で、また実際のスケジュール調整の中で、重要でない貢献度の

低い仕事に依然として優先権を与えてしまう。

時間に対する新しい要求が出てくると、自由な時間や、そこでしようと

していた仕事のほうを犠牲にしてしまう。数日あるいは数週間後には

新しい危機や些事に食い荒らされて、せっかくの自由にできる時間は

霧消している。

そうではなく、まず初めに本当に自由な時間がどれだけあるかを計算

しなければならない。次に適当なまとまりの時間を確保しなければなら

ない。そして常に、生産的でない仕事がこの確保済みの時間を蚕食しては

いないかと目を光らせなければならない。前にも述べたように、仕事を

刈り込みすぎるということはほとんど起こりえないことを知らなければ

ならない。

時間の管理は継続的に行わなければならない。継続的に時間の記録をとり、

定期的に仕事の整理をしなければならない。そして自由にできる時間の

量を考え、重要な仕事については締め切りを設定しなければならない。

 

大きな成果をあげているある人は、緊急かつ重要な仕事とともに気の

進まない仕事についても締め切りを設けたリストをつくっている。

それらの締め切り日に遅れ始めると時間が再び奪われつつあることを知る。

時間は希少な資源である。時間を管理できなければ、何も管理できない。

そのうえ時間の分析は、自らの仕事を分析しその仕事の中で何が本当に

重要かを考えるうえでも、体系的かつ容易な方法である。

汝自身を知れとの昔からの知恵ある処方は、儚い身の人間にとっては

不可能なほどに困難である。しかしその気があるかぎり、汝の時間を

知れとの処方には誰でも従う人ができる。

その結果、誰でも貢献と成果への道を歩むことができる。

 

 

この続きは、次回に。

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