お問い合せ

ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+1

今日最も複雑や組織である病院では、医師だけでなく、看護師、栄養士、

理学療法士、X線技師、薬剤師、病理技師、その他諸々の医療サービス

関係の専門家が指揮や命令を受けることなく同一の患者を相手に働いて

いる。

彼らは、主治医の治療方針という総合的な行動計画に従って共通の目的の

ために協力して働く。

組織上は、彼ら医療サービスの専門家もそれぞれ上司をもつ。

高度に専門化された知識分野においてプロとして働く。

しかし彼らは、患者の状況や病状やニーズに基づいて、ほかのメンバーに

十分な情報を与える。さもなければ、彼らの個々の仕事は益よりも害を

与える。貢献に焦点を合わせることが当然のことになっている病院では、

そのようなチームワークがほとんどいかなる困難もなしに実現されている。

ところがそうでない病院では、そのようなチームワークがほとんどいか

なる困難もなしに実現されている。ところがそうでない病院では、専門家の

間の横のコミュニケーションや、任務に焦点を合わせたチームへの自発的な

参加は、あらゆる種類の委員会、打ち合わせ、提示、説得にもかかわらず

なかなか実現されない。

 

今日の典型的な大組織は、伝統的な概念や理論を適用できないような

組織上の問題に直面している。

知識労働者は、自らの知識分野に関してはプロでなければならない。

自らの能力や仕事に関して、自らに責任があると考えなければならない。

例えば病院なら、生化学者であろうと看護師であろうと、それぞれの専門

機能に所属するものと考える。訓練や実績、評価や昇進など、人事管理上も

機能別の部門に属している。しかし仕事においては、彼らはますますほかの

まったく異なる専門分野の人たちとともに、特定の任務のために組織された

チームにおいて責任ある一員として行動しなければならなくなっている。

上方への貢献に焦点をあわせることによって、組織の問題をすべて解決

できるわけではない。しかしそうすることで不完全たらざるをえない組織を

動かすうえで必要な、仕事コミュニケーションに対する理解をもたらす

ことができる。

 

コンピュータの登場によって、今日知識労働者の間のコミュニケーションが

決定的に重要な問題になっている。人類の長い歴史において、これまで

問題は情報の中からいかにコミュニケーションを引き出すかだった。

情報は人によって処理され伝達されていた。そのため情報にはコミュニ

ケーション、すなわち意見、印象、注釈、判断、偏見が入り込んでいた。

ところが今日、突然、情報が大幅に非人格化し、コミュニケーションを

まったく含まないものとなった。情報は純粋な情報となってしまった。

したがって今日、われわれは互いに理解し合い、互いのニーズや目標、

感じ方や仕事の仕方を知るためにコミュニケーションを確保しなければ

ならないことになった。この点について情報は何も教えてくれない。

コミュニケーションは、声や文字を含め直接の接触によってのみ可能となる。

こうして今日、情報処理を自動化すればするほど、効果的なコミュニケ

ーションのための機会をつくらなければならなくなった。

 

第三に自己開発は、その成果の大部分が貢献に焦点を合わせるかどうかに

かかっている。組織に対する自らの貢献を問うことは、いかなる自己開発が

必要か、いかなる知識や技能を身につけるか、いかなる強みを仕事に適用

するか、いかなる基準をもって自らの基準とするかを考えることである。

 

第四に、貢献に焦点を合わせるならば、部下、同僚、上司を問わず、他の

人の自己開発を触発することにもなる。属人的な基準ではなく、仕事の

ニーズに根ざした基準を設定することになる。すなわち卓越性の要求で

ある。強い意欲、野心的な目標、大きな影響のある仕事の追求である。

われわれは、自己開発と人材育成について多くを知らない。

しかし唯一知っていることがある。人、特に知識労働者というものは、

自らが自らに課す要求に応じて成長する。自らが成果や業績とみなすものに

従って成長する。自らに少ししか求めなければ成長しない。

多くを求めるならば何も達成しない者と同じ努力で巨人に成長する。

 

● 属人

 

その人に属すること。法律などで、人を基本として考えること。⇔属地

 

● 卓越

 

群をぬいてすぐれていること。また、そのさま。

「―した技術」「これ等の―なる人」〈

 

● 野心的

 

望みなどの、身分不相応に大きいさま。また、試みなどの、新しく

大胆であるさま。「―な研究」

 

● 巨人

 

その分野ですぐれた能力をもち、偉大な業績のある人。「財界の―」

 

 

この続きは、次回に。

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