ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+11
(2) 多くを要求する大きなものか
仕事はすべて、多くを要求する大きなものに設計しなければならない。
一人ひとりが、それぞれの強みを発揮するものでなければならない。
関わりのある強みが成果をあげられるよう、大きく設計することが必要で
ある。しかしほとんどの組織がそのような考えでは仕事を設計していない。
逆に仕事を小さく設計している。だがそのような仕事は、人というものが
特定の時間に特定の働きを示すよう設計されつくられている場合にしか
意味をなさない。
実際に仕事につくのは生身の人である。そして最も単純な仕事さえ、要求
するものは必ず変化していく。しかも突然変化していく。
そのため仕事と人の完全な適合は急速に不適合へと変わる。
したがって、仕事はそもそも初めから大きくかつ多くを要求するものと
して設計した場合においてのみ、変化した状況の新しい要求に応じていく
ことができる。
このことは特に新人の知識労働者の仕事についていえる。
最初の仕事はいかなる強みをも存分に発揮できるものにしなければならない。
知識労働者のキャリアを導き、彼自身と彼の貢献を判定すべき基準は最初の
仕事において設定される。
成人として最初の仕事につくまでは、知識労働者は成果をあげる機会を
もたない。学校でできることは可能性を示すことだけである。
成果をあげることは、企業、政府機関、研究所、あるいは学校などに
おける現実の仕事においてのみ可能である。
したがって新人の知識労働者本人だけでなく、組織のほかの人たち、
すなわちほかの同僚や上司がまず明らかにすべき最も重要なことは、
彼が何をできるかである。
新人の知識労働者は、自分は所を得たか、自分に適した仕事についたかを
早く知りえなければならない。肉体労働に必要な適性や技能については
信頼度の高いテストがある。大工や機械工として仕事ができるかは前もって
テストできる。しかし知識労働の適したテストはない。
知識労働において必要なものは、あれこれのスキルではなく総合的な適正と
能力だからである。それらは実際に仕事をして初めて明らかになる。
大工や機械工の仕事はスキルによって規定されており、作業の違いは
ほとんどない。しかし知識労働者が貢献するには、組織の価値や目標が
彼自身の専門知識や技能と同じように重要な意味をもつ。
ある組織においては適合した強みを持つ者が、同種の別の組織には適合
しないことがある。したがって、知識労働者の最初の仕事は彼自身と組織の
適合をテストできるものでなければならない。
この続きは、次回に。