お問い合せ

ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+14

私がこのことに気づいたのは、初めて日本のマネジメントに接したとき

だった。驚いたことに、セミナーに参加した大企業のうち一つとして

人事考課制度を使っていなかった。「なぜか」という私の質問に対し、

彼らのうちの一人は、「あなた方の制度は、人の欠点や弱みを明らかに

するためのものである。しかし日本では、解雇や昇進ストップはまま

ならない。だから、そのような制度には関心がない。

個々の社員の弱みなどむしろ知らないほうがよい。だから、そのような

制度には関心がない。個々の社員の弱みなどむしろ知らないほうがよい。

知らなければならないのは、強みであり、何ができるかである。

ところがあなた方の考課制度は、人の強みに関心さえもっていない」と

答えた。

もちろんこの説に対しては、欧米の心理学者、特に人事考課を設計した

人たちからは異論があろう。しかしいまや、日本だけでなくアメリカや

ドイツにおいて人事効果制度はそのように見られている。

特に欧米は、日本の成功について考えるべきである。

日本には終身雇用制度がある。一度就職すると、それぞれ工員、事務員、

専門家、総合職として年齢と勤続年数に応じて昇進し、一五年で倍増と

いうペースで昇格していく。その間、退職や解雇はほとんどない。

四五歳を過ぎてようやく選別が行われ、ごく少数の者が能力と実績によって

上級マネジメントと選別される。

それでは、そのような制度は日本企業の業績をあげる能力といかなる

関係があるのか。答えは、そのような日本の制度が人の弱みを重視しない

ようにしていることにある。日本では、人を自由に動かせないために、

常に手元の人の中から仕事のできる者を探さなければならない。

したがって常に強みを探す。

私は日本の方法を推奨しているわけではない。理想からは遠い。

能力を実証できた者だけが重要なことのすべてを任されている。

重要でないことだけが組織によって行われている。

しかし欧米が個人にも組織にもメリットのある労働力の流動性を維持

したいのであれば、何とか日本のように、強みを探しそれを使うという

人事の方法だけは取り入れるべきである。

 

● 推奨

 

すぐれている点をあげて、人にすすめること。

「公立図書館の活用を―する」「―銘柄」

 

● 実証

 

1. 確実な証拠。確証。「―のない仮説」

 

2. 確かな証拠をもって証明すること。事実によって明らかにすること。

  「推理の正しさを―する」

 

 

 

この続きは、次回に。

トップへ戻る