ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+16
われわれが行うことのできるのは、現実の評価だけである。
評価すべきものも、現実の成果だけである。
これが仕事を大きくかつ挑戦的なものにすべきもう一つの理由でもある。
なぜならば、具体的な成果への期待との対比においてのみ、人の成果は
評価できるからである。
それでもなお、何らかの人事考課の方法は必要である。さもなければ、
われわれは人事考課を適切でないとき、すなわち人事のときに行うことに
なる。
したがって成果をあげるエグゼクティブは、彼ら独自の考課方法を工夫
している。まず貢献の目標と実際の成果を記録する。
その後、次の四点について評価する。
(1) よくやった仕事は何か
(2) よくできそうな仕事は何か
(3) 強みを発揮するには何を知り何を身につけなければならないか
(4) 彼の下で自分の子供を働かせたいと思うか
① そうであるならなぜか
② そうでないならばなぜか
この人事考課は通常のものよりも厳しく人を見る。
しかし強みに焦点を合わせている。何をできるかからスタートしている。
弱みは、強みを発揮し成果や業績をあげるうえでの制約としてのみとらえて
いる。強みに直接関係のない評価項目は、最後の(4)の②だけである。
部下、特に仕事のできる野心的な若い部下は力強い上司をまねる。
したがって、力強くはあっても腐ったエグゼクティブほどほかの者を
腐らせる者はいない。
そのような者は自らの仕事では成果をあげることができるかもしれない。
ほかの人に影響のない地位に置くならば害はないかもしれない。
しかし影響のある地位に置くならば破壊的である。
これは人間の弱みがそれ自体、重要かつ大きな意味をもつ唯一の領域で
ある。
人間性と真摯さは、それ自体では何事もなしえない。
しかしそれらがなければ、ほかのあらゆるものを破壊する。
したがって、人間性と真摯さに関わる欠陥は、単に仕事上の能力や強みに
対する制約であるにとどまらず、それ自体が人を失格にするという唯一の
弱みである。
● 真摯
まじめでひたむきなこと。一所懸命に物事に取り組むこと。
また、そのさま。
この続きは、次回に。