ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+24
「何もさせてくれない」という言葉は、惰性のままに動くための言い訳
ではないかと疑わなければならない。もちろん、誰もが何らかの厳しい
制約の中にいる。しかし、たとえ実際に何らかの制約があったとしても、
することのできる適切かつ意味のあることはあるはずである。
成果をあげるエグゼクティブはそれらのものを探す。
まず初めに「何ができるか」と言う質問からスタートするならば、ほと
んどの場合、手持ちの時間や資源では処理できないほど、多くのことが
あることを知るはずである。
強みを生かすことは、仕事の仕方についても重要である。どのような方法
ならば自らが最も成果をあげられるかを知ることはさほど難しいことでは
ない。
成人する頃には誰でも、朝と夜のどちらが仕事をしやすいかを知っている。
大まかに下書きをしてから書くのと、じっくり完璧な文章を一つひとつ
書くのと、いずれがよい文章をかけるかを知っている。
原稿を準備した場合と、メモだけの場合と、まったく何もなしの場合と、
いずれがよい仕事をできるかを知っている。
チームの一員としてはまったく駄目かもしれない。
詳細な筋書きがあるとき、つまり十分考えておいたとき仕事のできる人が
いる。プレッシャーがあると仕事のできる人がいる。
ようやく時間が間に合うくらいのほうが仕事のできる人がいる。
ある人は読む人であり、ある人は聞く人である。これら自らのことは、
右利きか左利きかのように誰でも知っているはずである。
もちろん、それらのことは本質的なことではないということはできる。
しかしそうとばかりはいえない面がある。癖や習慣の中には世界観や
自己認識など本質的なことを反映している者がある。
たとえ本質的でないとしても、それらの性癖は成果をあげることには
関わりがある。いかなる仕事にも当てはまることである。
成果をあげるエグゼクティブはこのことを知っている。
そしてそのように行動している。
● 惰性
これまでの習慣や勢い。
● 世界観
世界およびその中で生きている人間に対して、人間のありかたという点
からみた統一的な解釈、意義づけ。知的なものにとどまらず、情意的な
評価が加わり、人生観よりも含むものが大きい。
楽天観・厭世 (えんせい) 観・運命論・宗教的世界観・道徳的世界観などの
立場がある。
● 自己認識
自己認識(じこにんしき, Self-awareness)とは、内観能力のひとつであり、
自分を環境や他の個人とは別の個人であると認識する能力である。
● 性癖(せいへき)
性質上のかたより。くせ。「大言壮語する―がある」
この続きは、次回に。