ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+44
□ 意思決定の要因
ヴェイルとスローンの意思決定の特徴は次のようなものだった。
(1) 問題の多くは原則についての決定を通してのみ解決できることを
認識していた。
(2) 問題への答えが満たすべき必要条件を明確にした。
(3) 決定を受け入れられやすくするための妥協を考慮する前に、正しい
答えすなわち必要条件を満足させる答えを検討した。
(4) 決定に基づく行動を決定そのものの中に組み込んでいた。
(5) 決定の適切さを検証するためにフィードバックを行った。
これらが、成果をあげるうえで必要とされる意思決定の五つの
ステップである。
(1) 問題の種類を知る
まず初めに、一般的な問題か例外的な問題か、何度も起こることか個別に
対処すべき特殊なことかを問わなければならない。
基本的な問題は、原則と手順を通じて解決しなければならない。
これに対し例外的な問題は、状況に従い個別の問題として解決しなければ
ならない。
厳密にいえば、あらゆる問題が、二つではなく四つの種類に分類できる。
第一に、基本的な問題の兆候に過ぎない問題がある。
仕事の中で起こってくる問題のほとんどがこの種のものである。
例えば在庫についての決定は決定ではない。決定の適用にすぎない。
問題は一般的である。生産活動についての決定のほとんどが同様である。
生産管理部は月に数百の問題を処理する。だが問題を分析すれば、その
ほとんどがより基本的な問題の症状にすぎないことが明らかになる。
一人ひとりの生産管理技術者はこのことに気づきにくい。
毎月数回、蒸気や高熱液体のパイプの継ぎ手を直している。
だが生産管理部全体の仕事を分析するならば、問題の一般性が明らかに
なる。圧力や温度が高すぎパイプの継ぎ手を強化する必要が生じている。
全体に手をつけないかぎり、いつまでも問題は解決しない。
パイプ漏れの手当てに膨大な時間をとられ続けるだけである。
第二に、当事者にとっては例外的だが実際には基本的、一般的な問題が
ある。
合併の申し入れを受けた企業は、それを受け入れるならば将来同じような
申し入れを受けることはない。その企業、取締役会、経営陣に関する限り
二度と起こらない特殊な問題になる。
しかし合併は、常にどこかで起こっている基本的、一般的な問題である。
したがって申し入れを受け入れるか否かを判断するには合併についての
原則を知る必要がある。それを知るには他の組織の経験に学べばよい。
この続きは、次回に。