ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+72
P.F. Drucker Eternal Collection 1
The Effective Executive
Conclusion
終章❖成果をあげる能力を習得せよ
□ 成果をあげることは使命
本書は二つの前提に立っていた。
(1) エグゼクティブの仕事は成果をあげることである。
(2) 成果をあげる能力は修得できる。
第一に、エグゼクティブは成果をあげることに対して報酬を受ける。
彼らは自らの組織に対し成果をあげる責任をもつ。
それではエグゼクティブがエグゼクティブに値するためには、何を修得し
何を行わなければならないか。
この問いに答える上で、本書は組織の成果とエグゼクティブ自身の成果を
目標とした。
第二の前提は、成果をあげる能力は修得できるということだった。
そこで本書はいかにして成果をあげるエグゼクティブになるかについて、
読者が自ら学びたくなるような順序でエグゼクティブの仕事の多様な
側面を提示してきた。
本書は教科書ではない。その理由の一つは、成果をあげることは学ぶ
ことはできるが教わることはできないからである。つまるところ成果を
あげることは教科ではなく修練である。
しかし本書の構造と内容の扱い方から推察されるように、本書の主題は
「成果の向上に資する者は何か」であった。
「なぜ成果を上げなければならないか」という問いはほとんどしていない。
成果をあげることは当然のこととしたからである。
しかし本書が説いてきたことや各章の流れ、そしてそこから得られた
ものを振り返ってみるならば、エグゼクティブのあげるべき成果について
まったく新しい側面が浮かび上がってくるはずである。
すなわち成果をあげることは個人の自己開発のために、組織の発展の
ために、そして現代社会の維持発展のために死活的に重要な意味をもつと
いうことである。
● 修練
人格・学問・技芸などが向上するように、心身を厳しく鍛えること。
「―が足りない」「―を積む」「武道を―する」
(1) 成果をあげるための第一のステップは作業的な段階である。
すなわち時間が何に使われているかを記録することである。
これは機械の仕事であるとはいわないまでも非常に機械的な段階である。
自分自身で記録をとる必要はない。秘書や助手に取ってもらってよい。
しかもこの作業によって大きな改善が実現される。その結果は、直ちに
ではないにしても非常に早く現れる。
さらに継続的にこの作業を行うならば、成果をあげる能力の向上に向けて
次の一歩を踏み出せるようになる。
すなわち時間の分析であり、時間を浪費する要因の除去である。
いずれも行動を要求するものである。それはきわめて基本的な意思決定を
要求する。姿勢、関係、関心の変化を要求する。
時間の使い方や活動や目的の重要度に関して問題提起をする。
もちろん仕事の水準や質にも影響を与える。なおかつ数か月に一度、
定型化した作業として行うこともできる。
しかしここで問題とされるのは、時間という貴重な資源の利用の効率に
すぎない。
この続きは、次回に。