お問い合せ

ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+74

(5) 第6章、第7章で論じた成果をあげるための意思決定とは、合理的な

行動に関わるものである。たどりさえすれば自然に成果をあげられるような

広くてはっきりした道は存在しない。

しかしたどるべき方向や道筋を教えてくれる標識はある。

本書では、一連の事象を一般的な問題として認識したあと、意思決定が

満たすべき必要条件をいかにして設定すべきかについては論じていない。

それは直面するそれぞれの状況に従って考えなければならない。

しかし何をいかなる順序でなすべきかについては明らかにしてある。

それらの標識を追うことによって責任ある判断を行えるよう自らを育て

磨くことができる。

成果をあげる意思決定には段階と分析の二つが必要である。しかしその

本質はあくまでも行動の論理である。

自己開発とは、成果をあげるための能力を身につけることだけではない。

知識やスキルは身につけなければならない。仕事のキャリアを進むにつれ

新しい仕事の習慣を身につけていかなければならない。

時には、いくつかの古い仕事の習慣を捨てていかなければならない。

しかし、知識やスキルや習慣をいかに身につけたとしても、まず初めに

成果をあげるための能力を向上させておかなければ何の役にも立たない。

だが成果をあげるエグゼクティブになること自体は特別に賞賛されるべき

ことではない。そもそも成果をあげるエグゼクティブたるべく自らを訓練

することについて述べた本書が、キルケゴールの自己開発に関する偉大な

数の成果をあげるエグゼクティブを得るという目標の実現である。

もし、知識を必要とする地位には、聖人や詩人、あるいは一流の学者しか

つけられないとしたならば、大規模組織などは存在の不可能なお笑い草に

なってしまう。

組織のニーズは、非凡な成果をあげることのできる普通の人によって

満たさなければならない。これこそ成果をあげるエグゼクティブが応じる

べきニーズである。しかも目標は謙虚であって、誰でも努力さえすれば

実現可能である。しかし、成果をあげるエグゼクティブの自己開発とは

真の人格の形成でもある。それは機会的な手法から姿勢、価値、人格へ、

そして作業から使命へと進むべきものである。

 

● 合理的

 

道理や論理にかなっているさま。 むだなく能率的であるさま。2021/04/27

 

● キルケゴール

 

デンマークの著作家、哲学者。5月5日コペンハーゲンに生まれる。

 

● お笑い草

 

笑ってしまうような馬鹿らしい物事、笑われる原因、などの意味で

用いられる表現。 元来は「お笑い種」と表記された。

物笑いの種といった意味の語。

 

この続きは、次回に。

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