お問い合せ

ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+75

一人ひとりの自己開発が組織の発展にとって重要な意味をもつ。

それは組織が成果をあげるための道である。成果に向けて働くとき人は

組織全体の成果水準を高める。自らと他の人たちの成果水準を高める。

その結果、組織はよい仕事ができるようになるだけではない。

新しいことができるようになり、新しい目標を目指すことができるように

なる。エグゼクティブの能力の向上は、組織自身の方向付け、目標、目的に

対する挑戦を意味する。それはそこに働く人たちの目を、日常の問題から

機会のビジョンへと、弱みへのこだわりから強みの発揮へと向け直す。

そしてさらにその結果、高い能力と意欲をもつ人たちに対し、組織自身を

魅力ある存在にするとともに、高度の仕事ぶりと献身を動機づけることに

なる。

組織は、優秀な人たちがいるから成果をあげるのではない。

組織の水準や習慣や気風によって自己開発を動機づけるから、優秀な

人たちをもつことになる。そして、そのような組織の水準や文化や気風は、

一人ひとりの人が自ら成果をあげるエグゼクティブとなるべく、目的意識を

もって体系的に、かつ焦点を絞って自己訓練に努めるからこそ生まれる。

現代社会は、存在するためとまではいわなくとも、機能を続けるためには、

組織の成果をあげる能力、その活動と成果、その価値と水準、そしてその

自己規律に大きく依存する。

今日、組織の活動は、経済的分野さらには社会的分野さえ超えて、教育、

保健、知識の分野において決定的に重大をもつようになった。

しかも、組織のうち重要なものは、ますます知識組織となってきた。

すでにそれらの組織は多くの知識労働者を雇用している。

そして組織は、エグゼクティブとして仕事をする人たち、組織全体の成果に

責任をもつ人たち、それぞれの知識と仕事によって組織全体の活動と成果に

直接影響を与える人たちを擁するにいたっている。

しかし今日、成果をあげる組織はそれほど多くはない。

成果をあげるエグゼクティブよりも少ない。もちろん光り輝く実例もそこ

ここにはある。しかし全体的には、組織としての活動ぶりはいまだ未熟で

ある。膨大な資源が企業、政府機関、病院、大学に集められている。

だが成果はあまりに平凡であり、活動はあまりに散漫である。

あまりに多くの資源が昨日のために費やされ、意思決定と行動を避ける

ために費やされている。

一人ひとりのエグゼクティブと同じように、組織もまた成果をあげるべく

体系的に仕事をし、成果をあげる習慣を自らのものにする必要がある。

組織もまた、問題の解決ではなく機会の開発に力を入れることを学ば

なければならない。そして強みを生かすことに努めなければならない。

すべてのことを少しずつ行うのではなく、優先順位を決め集中しなければ

ならない。

しかしエグゼクティブの成果をあげる能力こそ、組織が成果をあげるための

基礎的な条件の一つであり、組織の発展に対し最も重要な貢献を行う。

 

 

この続きは、次回に。

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