P・F・ドラッカー「創造する経営者」㉚
市場経済のもとでは、顧客が喜んで代価を払い、優先して購入してくれる
ことだけが、経済的な成果を測る要綱な基準である。そうでない製品は、
すでに限界的な存在であるか限界的な存在になりつつあるものと疑わな
ければならない。
したがって、製品の市場におけるリーダーシップの分析には、「この製品は、
ほかの製品に優先して、あるいは少なくとも同程度に求められて購入
されるか」「顧客に購入させるには、表2の製品FやGのように、特別の
アフターサービスを提供しなければならないか」を問わなければならない。
そして「顧客からの代価として、最小限必要な平均的な利益を得ているか」
「製品の特性に見合う代価を受けているか」「製品C、Dのようなわれ
われが知らないリーダーシップや特性はあるのか」と問わなければなら
ない。
主力製品に際立った特性はなく、市場やリーダーシップを握っていると
いう確証がないならば、売上げや利益が順調なうちに手を打たなければ
ならない。売上げや利益はいつ急落するかもしれない。しかし誰も準備が
できていない。誰も危険を感じていない。それらの製品の地位を挽回したり、
代わるべき新製品を開発したりするために働いている人もいない。
次は、製品の見通しについての分析である。前ページ表2の右欄は、多大な
作業それを上回る論議の集約である。今後五年間にそれぞれの製品が
どうなるかという見通しについての判断は、現在の市場におけるリーダー
シップの判断と同じように白熱した論議の的となる。
表2を一瞥しただけで、経験に富んだ経営者ならば、製品Aについては、
例えばエンジニアリング部門あたりから反論が出されるであろうことが、
製品Bについては、なおかつ楽観的にすぎるであろうことが明らかな
はずである。
製品Dについては、経理は高い評価を与えることに反対であろうが、
営業はさらに高い評価を与えるべきだと考えるに違いない。
製品Iについては、量は少なくとも売上げは続くという期待は、希望的
観測にすぎないかもしれない。しかし、この製品を設計し、製作し、
販売して今日の地位に昇進してきた古い人たちは、まだ再生を信じている
のだろう。
これらの分析の目的や必要性については改めて説明するまでもないだろう。
驚くべきは、このような分析を一般にあまり行っていないということで
ある。もちろん個々の製品については分析している。特に大企業では市場に
ついての分析も行っている。しかし通常、長期計画を重視している企業
さえ、業績をもたらす領域の全てについてはおろか、それらの領域のうち
製品だけについてもこのように横断的で同時的な分析は行っていない。
横断的な分析はたとえ容易でないとしても、行うことはできるはずである。
しかもそれは成果と業績をあげるための最も有効な問題提起の方法である。
※ 表2は、省略致します。
購読にて、ご覧ください。
この続きは、次回に。