P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊱
(5) 失敗製品
これは診断や処置を必要としない問題製品である。おのずと現れおのずと
消える。
企業市場最も有名な失敗製品である一九五七〜五八年のエドセルによる
失敗からフォードが立ち直ったように、健全な企業ならば重大な失敗製品を
出してもつまずきはしない。
失敗製品は、青いリンゴを食べすぎた子供の腹痛に似ている。痛みは大きい。
危険でもある。しかし、健康な子供ならば最初の一日半を越せば回復する。
毒は消える。
さてここから先はもっと難しい製品である。
(6) 昨日の主力製品
この種の製品は、今日の主力製品と同じように大体において売上は大きい。
しかしもはや利益に貢献はしていない。価格の引き下げ、強力な広告宣伝と
営業活動、特に小口の顧客に対する特別のサービスなどによって市場に
居残っているにすぎない。
売上の大きさにしては利益は小さい。しかし、生き延びさせるための
作業量は増えている。前述したように、表5の製品Aが、昨日の主力製品で
ある。表3・表4(五六ページ)に示されているような資源の集中こそ、
この類型の特徴である。昨日の主力製品はみなに愛されている。
今日の企業を築いた製品である。「古きよき製品Aへの需要は、不朽で
ある」は、いわば社訓の一節となっている。
だが、昨日の主力製品はさらに陳腐化しつつある。間もなく完全に陳腐化
する。表5の製品Iのように老衰する。何ものもその衰退を防ぐことは
できない。衰退を遅らせるだけでも、割りの合わない膨大なエネルギーを
必要とする。
この続きは、次回に。