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P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-22

第7章❖知識が事業である

 

□ 際立った知識が事業存続と成長の源泉

 

顧客が事業であるのと同じように、知識が事業である。

物やサービスは、企業がもつ知識と、顧客がもつ購買力との交換の媒体で

あるにすぎない。

企業は、人間の質によって、つくられも壊されもする人間組織である。

労働は、いつの日か、完全にオートメーション化されるところまで行わ

れるようになるかもしれない。しかし、知識は、優れて人間的な資源で

ある。

知識は、本の中にはない。本の中にあるものは情報である。

知識とはそれらの情報を仕事や成果に結びつける能力である。

そして知識は、人間すなわちその頭脳と技能のうちにのみ存在する。

事業が成功するには、知識が、顧客の満足と価値において、意味あるもので

なければならない。知識のための知識は、事業にとってあるいは事業以外の

ものにとっても、無用である。知識は、事業の外部、すなわち顧客、市場、

最終用途に貢献して初めて有効となる。

ほかの者と同じ能力をもつだけでは、十分でない。そのような能力では、

事業の成功に不可欠な市場におけるリーダーの地位を手に入れることは

できない。卓越性だけが利益をもたらす。

純粋の利益は革新者の利益だけである。

経済的な業績は、差別化の結果である。差別化の源泉、および事業の存続と

成長の源泉は、企業の中の人たちが保有する独自の知識である。

成功している企業には、常に、少なくとも一つは際立った知識がある。

そしてまったく同じ知識をもつ企業は存在しない。

著名な大企業を特徴づける際立った知識とは、次のようなものである。

 

世界最大のメーカーGMは、高度に技術的であって、大量生産と大量販売に

向いた事業を発展させるための際立った知識をもっている。

GMは、この知識を自動車産業において獲得し、ディーゼル機関車、

ブルドーザー、耐久消費財への進出に利用した。

GMは、凡庸な企業を引き受けて成功させる能力に優れている。

しかしGMにも限界はある。GMといえども、その知識は、普遍的では

なく特殊である。GMは航空機用エンジンの主要メーカーにはなれなかった。

航空機用エンジンの技術は、GMが成功している技術に近いものでは

あったが、市場が違い知識が違った。

またGMは、自動車の分野においてさえ万能の天才ではなかった。

イギリスの子会社ボクスホールは、四○年間もGMの所有とマネジメントの

ものにあるが、いまだにイギリスの国内市場においてようやく第三位の

地位を占めているにすぎない。

 

この続きは、次回に。

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