お問い合せ

P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-23

もう一つの例を挙げるならば、アメリカでは大手市中銀行は三つの分野に

おいて優れた知識を持たなければならない。

第一に、資金の管理についての知識、第二に、信託や投資に関わる資本の

管理についての知識、そして第三に、おそらく最も重要な知識として、

データ処理についての知識である。

 

IBMは、同社自身も強調しているように、その優れた製品のために、

コンピュータ産業においてリーダー的な地位にあるのではない。

企業のデータをと情報の管理について優れた知識をもっているために

リーダー的な地位にある。

IBMが顧客から受けている報酬は、製品に対してというよりはサービスに

対してである。すなわちIBMは事業のプロセスについての知識によって

事業を行っている。

 

宇宙・防衛産業において、マーチン社やノースアメリカン・アビエーション社と

同業のある大手メーカーは、冶金学、電子工学、航空力学、物理学について

際立った能力をもっている。

しかし、そのメーカーの真の際立った知識は、理論的にも実践的にも

システム・マネジメントに関わるものだった。すなわち未知の仕事に

向けて多様な技能を組織するための知識に優れている。

システム・マネジメントにおける卓越性とは、未知なるものを予測し、

未知なるもののために計画し、未知なるものを生産的に組織化する能力の

ことである。

確かにオランダのフィリップスはその技術において卓越性を誇っている。

しかしそのような電機メーカーはほかに二ダース以上もある。フィリップスを

際立たせているものは真に国際的な会社を運営する能力である。

フィリップスの海外子会社は、すべて現地の経済、社会、市場に溶け込んで

いる。

しかもそれらの子会社は、すべて同じ製品を扱っているだけでなく、

その意識のうえで、間違いなく緊密に結ばれた家族の一員となっている。

そしてその家族においては、みなが家長すなわち母国オランダのトップ

マネジメントの権威のものにある。

 

卓越さを発揮できる事柄が、きわめて平凡なことである場合もある。

何千と言う企業が優れた仕事をしているが、その中でその企業だけが

さらに優れた仕事をしているというケースである。

 

ある有名な大企業において、ある事業部がほかの事業部よりもはるかに

高い利益を一貫してあげていた。しかしその事業部は世界中の何十万と

いう金属加工工場と同じ機械と工程によって、何百万という金属片を切ったり、

曲げたり、削ったりしているにすぎなかった。

だがその事業部は、この平凡な仕事を非凡にこなしている。

自慢は、顧客が欲しいものを説明し終わらないうちに見本をつくれること

であり、顧客が帰り着く前に出荷を開始できることであった。

この事業部の卓越性は設計の単純さと速さにあった。設計のための諸々の

段階を踏むことはほとんどなかった。学校も出ていないような現場監督が、

ほとんど時間をかけずに図面を引き、機械にかけ、プロトタイプをつくって

いた。

 

この続きは、次回に。

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