P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-35
三つ目の欠けているものは、知識である。
● 「本当に重要な新しい知識として何を取得する必要があるか」
● 「現在の中核的な知識の何を向上させ、最新のものとし、進歩のもの
とし、進歩を図る必要があるか」
● 「わが社の知識のどこに再定義の必要があるか」
ほとんどの場合、最初の二つの問いの重要性については明らかである。
通常、見落とされるのは、最後の問いである。
しかしこれは最も重要である。
製紙メーカーにとって、印刷業界についての知識、印刷会社へのサービス、
印刷業への理解は、必要なマーケティング知識である。
しかし製紙メーカーが、事務用コピー機をもつコピー用紙の消費者に対し
マーケティング知識をコピー市場の知識やグラフィックアート市場の知識に
変える必要があるかもしれない。
そのためには新しいことをいくつか学ばなければならない。
なぜならば紙が付随的な消耗品に過ぎないという一般企業は、紙が最も
高価で基本的な材料である印刷業者とはまったく異なる購買の仕方をする
だろうからである。しかし、重要なことは知識の明確な再定義である。
さもなければ、昔からの知識のうち新しい市場に適用できるものまで利用し
損なうということがありうる。そしてその結果、現在のリーダーシップを
捨てることになるかもしれない。
こうして、自らの企業についての分析の終点まで到達したからには、自社の
事業が何であり、何をしており、何をできるかを理解できるはずである。
すなわち次のことについて意思決定を行うことができるようになっている
はずである。
● 製品やサービスが提供しようとする顧客の満足。自社の製品やサービスが
満たすべき顧客のニーズ。事業が対価を期待しうる顧客への貢献。
● 望ましい貢献を果たすために卓越性をもたなければならない知識の領域。
事業の存続と繁栄のために必要な卓越性の領域。必要とする人材。
● 際立った価値を提供すべき顧客、市場、最終用途。そして、それらの
顧客、市場、最終用途に到達するために開拓し、かつ顧客としても満足
させるべき流通チャネル。
● これらの目標を具体化すべき技術、プロセス、製品、サービス。
● 成果をもたらすあらゆる領域におけるリーダーシップ。
マーケティング分析と知識分析は、業績をもたらす領域、利益、資源に
ついての分析や、コストセンター、コスト構造についての分析と重ねられる
とき、新しい事実を明らかにする。
それだけではない。経営者をして「これがわれわれの事業である」といい
うる識見、「これがわれわれの事業のあるべき姿である」といいうるビジョン、
そして、「これが現在の姿から、あるべき姿への移行のための道筋である」と
いいうる方向性を与える。
この続きは、次回に。