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P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-36

P.F. Drucker Eternal Collection 6

Managing for Results

Part:II

 

第II部❖機会に焦点を合わせる

 

第9章強みを基礎とする

 

事業とその経営状況を分析すれば、常に、事態は想像以上に悪いことが

明らかになる。

例えば、自慢の製品が、昨日の主力製品、ないしはマネジメントの独善的

製品だった。あまり注意していなかった活動が実は大きなコストセンターで

あり、競争力を危うくするほどに負担になっていた。

品質と信じてきたものが、顧客にとってはほとんど意味のないものだった。

重要な知識や価値ある知識が成果をあげられるところで適用されていな

かったり、何の役にも立たないところで適用されていたりした。

そのようなわけで、分析が終わったあと、「一日の危機は一日にて足れり」

として元のその日暮らしに戻ることを望んだ経営者を私は何人も知って

いる。しかし、まさに重要で困難な問題があまりに多いからこそ、単純な

中小企業であっても、その日暮らしではマネジメントは不可能となる。

しかも退化こそ日常の状況である。したがって目的意識に基づく体系的な

計画が不可欠となる。

ほとんど際限ない課題を管理可能な数にまで減らすことが必要になる。

希少な人材を最大の機会と最大の成果に集中し、少数の適切なことを

卓越性を持って行うことが必要になる。

事業を成功させるには三つの保証済みのアプローチがある。

 

(1) 利用しうる市場と知識から最大限の成果をあげるべく、あるいは、

      少なくとも、長期的に見て最も有利な成果をあげるべく、「理想

      企業」のモデルからスタートする。

 

(2) 最大の成果をあげるべく、「機会」の最大化を図る。

 

(3) 最大の成果をあげるべく「人材」の最大利用を図る。

 

経済史上、偉大な企業の興隆は、この三つアプローチによっている。

 

(1) 理想企業のモデル—GMの興隆

 

理想企業のアプローチの例は、世界最大の自動車メーカーであるにとど

まらず、世界最大のメーカーとなったGMの興隆である。

GMの組織を再設計し、その後ほぼ三○年にわたりCEO(最高経営責任者)

としてその後のGMを築いたアルフレッド・P・スローン・ジュニアが、

その間の事情について『GMともに』という本を書いた。

彼が一九二一年の景気後退時にマネジメントを引き継いだとき、GMは

崩壊寸前だった。一つの車種しかもたないフォードが市場の六○%を占めて

いた。これに対し、八つの車種をもつGMは、市場の一二%を占めるに

すぎず、はるか離れた二位の座にあった。八つの車種のうち二つだけが

利益をあげ、ほかの六つは赤字だった。赤字であるだけでなく市場も失い

つつあった。

 

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