P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-44
○ 機会の最大化-昨日の企業から今日の企業へ
機会の最大化とは、理想企業の実現と、その最大の成果の迅速な実現に向け、
大きな一歩を踏み出すことである。
現在の事業についての分析結果を基礎として理想企業を設計するにあたっては、
あらゆる製品、市場、流通チャネル、コストセンター、活動、努力を三つの
類型に分けなければならない。
● 異常なほど大きな成果の機会が存在するための推進すべき優先的領域。
● 意図的に廃棄することに機会を見出すべき廃棄の優先的領域。
● 推進も意図的な廃棄も、さしたる成果をもたらさないという製品、
市場、知識に関わる膨大な領域。
廃棄することに機会を見出すということは、奇異に聞こえるかもしれない。
しかし、古いもの、報われないものを意図的かつ計画的に廃棄することは、
新しいもの、有望なものを追求するための前提である。
まさに廃棄は、資源を解放し、古いものに代わるべき新しいものの探求を
刺激するがゆえに、イノベーションの鍵である。
推進すべき優先的領域と廃棄すべき優先的領域は相互補完の関係にあり、
同じように高い優先度をもつ。
推進すべき優先的領域の発見は容易である。それは、成功すればコストを
遥かに超える成果がもたらされる領域である。
それらの領域は、理想企業の設計に合致する製品や市場である。
GMの経験がよい例である。一九二一年当時、利益をあげ市場において
リーダーシップをもっていたのはビュイックとキャデラックだけだった。
この二つの車種だけが、八つの車種のうちスローンの理想企業の設計に
合致していた。
推進すべき優先的領域は、次のようなものである。
● 明日の主力製品とシンデレラ製品。
● 明日の主力製品に明後日取って代わるべきもの。
● 新しい重要な知識。
● 流通チャネル。
これらの優先的領域に対し、資源が過剰に供給されていることは稀である。
したがって問題は、資源の投入が多すぎるかではなく、成果をあげるために
十分かである。
廃棄すべき優先的領域もまた通常きわめて明らかである。
● 独善的製品と非生産的特殊製品。
● 不必要な補助的コストと浪費的コスト。
● 昨日の主力製品。昨日の主力製品は、たとえまだ利益を生んでいたと
しても間もなく明日の主力製品と成功に対する障害となる。
昨日の主力製品は、廃棄しなければならなくなる前に廃棄すべきことは
もちろん、まだ廃棄したくないうちであっても廃棄しなければならない。
活動に要するコストが、その活動によってもたらされる利益の二分の一を
超えるならば、そのコストを発生させている活動そのものを廃棄の候補と
しなければならない。
コストの増加がないように見えても、それだけでは不十分である。
成果がなければならない。いかなる活動においても、経理の示す額よりも
遥かに大きいからである。
この続きは、次回に。