お問い合せ

P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-48

○ 人材の最大利用-有能な人材の配置

 

行動のためのプログラムにおいて最も重要なことは、人材の配置のための

意思決定である。この意思決定が行われ実施に移されなければ何事も

行われない。

最も希少かつ最も生産的な資源、すなわち有能な人材の配置に関わる

唯一の原則は、その最大利用である。ロスチャイルド家の四人の兄弟の

能力に匹敵する資源を持っている企業は、ほとんどない。

しかし、成果をあげることを望むならばロスチャイルド家に倣わなければ

ならない。

第一級の人材は常に、最も大きな機会、最も大きな見返りのある領域に

割り当てなければならない。そして第一級の機会に対しては、卓越した

才能と実績を持つ人材を割り当てなければならない。

大きな機会に対して割り当てるべき人的資源がない場合には、何として

でも手に入れなければならない。最高の人材抜きに大きな機会を利用

しようとしてはならない。したがって、大きな機会以外のものに対して、

最高の人材を割り当ててはならない。二義的な機会のために、最高の

人的資源を手に入れようとしてもならない。

しかし、実際にこれらの原則に従うことは容易でない。

まず、ロスチャイルド家のカルマンのような人たち、すなわち必要な

能力はもたないが何らかの理由から面倒を見てやらなければならない

人たちがいる。

彼らには閑職を与えるべきである。大きな機会を任せるよりもはるかに

安上がりである。閑職に置くならばコストは給料である。

大きな機会を任せれば、そこから得られるはずの利益を失うことになる

かもしれない。

同じように問題になるのは二義的な機会である。

二義的な機会は、あくまでも現在の人材だけで賄わなければならない。

非情にならなければ、第一級の機会を餓死させる。

最大の誘惑は、第一級の人的資源を集中させずに分散させることである。

優先順位に関わる苦しい意思決定を避けるために、強い人間に対し、

弱い人間に助言を与え助けるよう頼んでしまう。

「ときどき一日か二日割いてくれればよいのだが」が典型的なセリフで

ある。しかし実際には、その優秀な人材は、直ちにその弱い人や二義的な

機会にかかりきりになる。

強みが力を発揮するには、集中しなければならない。

しかも大きな機会は集中した注意力と献身を要求する。

成果をあげるために人材の配置を行うことには大きな苦痛を伴う。

したがってマネジメントは、自らに対し、心理学の「強制選択」なる

規律をかさなければならない。

大きな機会のリストをつくり、それぞれに対して順位をつける。

これが最初の強制選択である。なぜならば、曖昧さ抜きに順位をつけな

ければならないからである。

次に、第一級の人材やチームに対し、強制選択によって順位をつける。

そして、第一順位の機会が必要とするだけの数の人間を、第一順位の

人材から割り当てる。順次同じことを行う。下位順位の機会が、上位

順位の機会を犠牲にして人材の割り当てを受けることはない。

この方法において行うべき意思決定は、機会と人材に対する順位づけ

だけである。ほかの問題は、そのあとのことである。

人材の配置は致命的に重要な決定である。

この配置の決定が、成果のためのプログラムとなるか、それとも単なる

紙くずに過ぎないプログラムとなるかを決める。

 

● 倣う(ならう)

 

すでにあるやり方、例をまねて、そのとおりにする。

手本としてまねをする。「前例に―・う」

 

● 二義的

 

根本的でないさま。二次的。「―な問題とする」

 

● 根本的

 

物事が成り立っているおおもとに関するさま。

基本的であるさま。「―な誤り」

 

● 閑職(かんしょく)

 

仕事の暇な職務。重要でない職務。「―にまわされる」

 

● 強制選択

 

心理テストの一手法で、好ましさの度合いなどが同程度と思われる2つ

(あるいはそれ以上)の選択肢から、強制的にいずれかを選ばせる方法。

 

この続きは、次回に。

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