P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-69
○ どこに未来を探すか
すでに起こった未来は、体系的に見つけることができる。
調べるべき領域は主に五つある。
(1) 人口構造
第一に調べるべき領域は、人口構造である。人口の変化は、労働力、
市場、社会的圧力、経済的機会にとって最も基本となる動きである。
すでに起こった人口の変化は逆転しない。しかもその変化は早くその
影響を現す。しかし私の知るかぎり、「人口構造の変化は、わが社に
とっていかなる意味をもつか」「雇用と労働力に関して、いかなる
意味をもつか。新しい市場に関して、いかなる意味をもつか。
市場の基本的な構造をどのように変えるか」「わが社の顧客にとって、
いかなる意味をもつか。
わが社の製品にとって、いかなる意味をもつか。
わが社の事業全体に、いかなる意味をもつか」を考えている企業は
ほとんどいない。
事実、すでにアメリカでは急速な伸びを示す二つの市場が現れている。
しかしそのいずれについても、いかなる経営書も触れていない。
その一つが余暇市場である。これまで同一の範疇にあると思われていな
かった製品やサービス、すなわちボウリング、キャンプ、芝生の手入れ、
ペーパーバックの本、生涯教育などの市場である。
これらのすべてが競争関係に入った。いずれも、金よりも希少なもの、
すなわち自由時間を必要とする。資格を取るために夜学に行く若い技術者や
管理者には、ボウリングや芝生の手入れの時間はない。
この余暇市場では、人は所有のためではなく、行動のために支出する。
製品やサービスの間にいかなる違いも認められなくなる。彼らにとって
意味があるのは時間である。この余暇市場は、報われるところの大きな
成長市場である。しかし、それは同時に競争の激しい難しい市場である。
もう一つの成長市場は事務用品市場である。すなわち、家庭用の消費財
ではないにもかかわらず生産財でもない製品やサービス、タイプライターや
コンピュータなど、知識労働者の生産性を上げるための製品やサービスの
市場である。
この続きは、次回に。