お問い合せ

「道をひらく」松下幸之助 ㉜

・根気よく

 

どんなによいことでも、一挙に事が成るということはまずあり得ない。

また一挙に事を決するということを行えば、必ずどこかにムリを生じて

くる。すべて事は、一歩一歩成就するということが望ましいのである。

だから、それがよいことであればあるほど、そしてそれが正しいと

思えば思うほど、まず何よりも辛抱強く、根気よく事をつづけてゆく

心がまえが必要であろう。

「徳、孤ならず」ということばがあるけれども、これは正しいことは

いつかは必ず人びとに理解してもらえるという意味にも通じる。

しかし、これとても、一ペンにというわけではない。徐々にということ

である。だから、いかに正しいと思うことでも、その正しさにとらわ

れて、いたずらに事をいそぎ、他を誹謗するに急であってはならない。

みずからの正誤を世に問うためにも、まずは辛抱強く、根気よく事を

すすめてゆくという謙虚な姿がほしいのである。

あわただしいこの人の世、ともすれば浮足立って、辛抱の美徳、根気の

美徳が失われがちであるが、おたがいに謙虚に二省、三省してみたい

ものである。

 

● 成就

 

物事を成し遂げること。また、願いなどがかなうこと。

悲願を―する」「大願―」

 

● 徳、孤ならず

 

徳のある人は慕い寄る多くの人間がいるので、孤立することはないと

いうたとえ

 

・思い悩む

 

人間は神さまではないのだから、何もかもが見通しで、何もかもが

思いのままで、悩みもなければ憂いもない、そんな具合にはゆかない

のである。

悩みもすれば憂いもする。迷いもする。わからん、わからん、どうにも

判断がつかん、そんなことが日常しばしば起こってくる。

碁ならば、わからんままに石を打っても、別に人に迷惑をかけるわけ

ではないけれど、人と人とがたがいに密接なつながりを持つこの世の

中で、わからんわからんと思い悩んだままで仕事をすすめたら、とん

でもない迷惑を人に与えてしまう。

わからなければ、人に聞くことである。己のカラにとじこもらないで、

素直に謙虚に人の教えに耳を傾けることである。それがどんな意見で

あっても、求める心が切なければ、そのなかから、おのずから得るも

のがあるはずである。

おたがいに、思い悩み、迷い憂えることを恥じるよりも、いつまでも

己のカラにとじこもって、人の教えを乞わないことを恥じたいと思う

のである。

 

ながい一生のうちに 人はいくたびか

自分の将来を左右する岐路に

血のにじむ思いで 立たなければならない

ながい歴史のうちに 国もまた いくたびか

自らの行くすえを鋭く見きわめるべき

意義深い時期に みまわれる—–

緑豊かな国土 香り高い伝統と歴史

そこに培われた 民族のすぐれた素質

この日本の未来 いま静かに 見きわめたい

 

 

この続きは、次回に。

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