お問い合せ

「道をひらく」松下幸之助 ㊻

・旗を見る

 

射場に行って射撃の練習をすると、遠い標的の下に監視の人がいて、

発射のたびに旗を振ってくれる。その旗の振りぐあいで、ねらいが的を

射たか、はずれたか、また右にそれたか左にずれたかが、一目でわかり、

次のねらいを修正する。

こんなことをくりかえして、しだいしだいに上達するわけで、もしこの

旗を見なかったら、たとえ百万発の射撃をしたところで、それはいわば

闇夜の盲射ちにも等しくて、ねらいの効果もわからず、何の上達もない

であろう。

考えてみれば、おたがいの毎日の働きについても、実はこんな旗が

たくさん振られているのである。その中には、たとえば数字という形で、

目に見えてくるものもある。しかし、目に見えない旗の方がはるかに

多いであろう。

その見えない旗を見きわめて、毎日の成果を慎重に検討してゆくところに、

仕事の真の成長があり、毎日の尊い累積がある。

おたがいに忙しい日々ではあるけれど、目に見える旗はもちろんのこと、

目に見えない旗をも、よく見きわめるだけの心がけを、つねにきびしく

養っておきたいものである。

 

・つきまとう

 

こどもが親につきまとう。うるさいほどにつきまとう。ときに閉口する

ほどのことがあっても、それでも、つきまとわれればやっぱりかわいい。

うれしい。

自分のつくった製品、自分の売った商品、自分のやった仕事。

つくりっ放し、売りっ放し、やりっ放しでは心が残る。世間にもまた

仕事にも相すまない。おたがいに、つくることに真剣で、売ることに

誠実で、そして仕事に真実熱心ならば、その製品、その商品、その仕事の

ゆくえをしっかり見定めたい。

見定めるだけでなく、どこまでも、いつまでも、それについてまわり

たい。台所にはいれば台所へ、座敷に上がれば座敷へ、外国へ行けば

外国までも、どこまででもうるさいほどにつきまといたい。

使い具合はどうですか、調子はどうでしょう、ご不便はございませんか、

故障はありませんか。

ときに閉口されるほどであっても、仕事の成果を案ずるその真剣さ、

誠意はうれしい。ありがたい。

こんな心がけで、おたがいにつくりたい。売りたい。そして懸命に

仕事をしたい。

 

● 閉口

 

「閉口」=どうにもならなくて困ること。 手におえないこと

(例)彼のしつこさには閉口する。 *「閉口」=(口をとじて何も

言わない)すっかり困ること。2021/11/18

 

 

この続きは、次回に。

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