「道をひらく」松下幸之助 ㊿+8
・こわさを知る
こどもは親がこわい。店員は主人がこわい。社員は社長がこわい。
社長は世間がこわい。また、神がこわい。仏がこわい。人によって
いろいろある。
こわいものがあるということは、ありがたいことである。これが
あればこそ、かろうじて自分の身も保てるのである。
自分の身体は自分のものであるし、自分の心も自分のものである。
だから、自分で自分を御すことは、そうむつかしいことでもない
ように思われるのに、それが馬や牛を御すようには、なかなかうまく
ゆかないのが人間というもので、古の賢人も、そのむつかしさには
長嘆息の体である。
ましてわれわれ凡人にとっては、これは難事中の難事ともいうべきで
あろう。
せめて何かのこわいものによって、これを恐れ、これにしかられながら、
自分で自分を律することを心がけたい。
こわいもの知らずということほど危険なことはない。時には、なければ
よいと思うようなこわいものにも、見方によっては、やはり一利があり
一得があるのである。
● 御する
● 長嘆息
長いため息をついて嘆くこと。長嘆。
「不景気を伝える記事をみては―する」
この続きは、次回に。