続「道をひらく」松下幸之助 ⑲
○ 卯月(うづき)
・素直な門出
花の季節。うららかな春の日射しのなかに、かわいいこどもたちの
歓声がこだまする。幼稚園。小学校。生まれてはじめて、見知らぬ
人びとのなかに入ってゆくこのいささかの不安と素直な喜び。
親も子も——。
それに進級、進学。今までの知らぬ間の惰性をふるいおとして、何か
心が新たになったようなこの素直な喜びと、何かをやろうと期す決意。
そしてまた就職、自立の季節。はじめてわが手で働くということを
味わい、はじめて自立への門口に立つ。この素直な期待と胸のふく
らむような喜び。子もまた親も—–。
花の季節はまた結婚の季節でもある。一人が二人になって、今まで
一人で考えてきたことを、これからは二人で考え合って、互いに相手
をいたわり支え合って、第二の人生を歩みはじめるこの新鮮な感激と
喜び。
花の季節は、人それぞれの素直な門出の季節である。そしてこの素直
さが、いつまでも持ちつづけられるよう祈りたい思いに立つ季節でも
ある。
● 門口(かどぐち)
1. 家や門の出入り口。
この続きは、次回に。