お問い合せ

続「道をひらく」松下幸之助 ⑳

・激動

 

若葉がもえて、そよ風が吹いて、何となく汗ばんできて、だからマフ

ラーもとろう、オーバーもぬごう、身軽になって思い切り腕ものばそう。

自然が変われば、人の姿はおのずからに変わっていく。

変えるべきときには、素直に変えればいいので、汗をかきながらオー

バーのエリを立てる必要はすこしもないし、北風にふるえながらマフ

ラーをとる必要もない。

世界は激変そして激動。だからお互いの周辺も何となくあわただしく

移りゆく。ゆれ動くものはゆれ動くし、移りゆくものは移りゆく。

その姿をまず素直に観じることである。そして素直にその適応の道を

考えることである。

そのなかから、変わって変わらぬものを見つめたい。動いて動かぬ

ものを見つめたい。いかにゆれ動いても、天地が逆転しているのでは

ないし、いかに変わっても、人間はやはり人間なのである。激動への

対処の道も、基本はやはりここにおいてみたい。むつかしいことかも

しれないが、今ほどこれが大事なときはないようにも思えるのである。

 

・まだまだ

 

あなたは魚料理が好きで、私は肉料理が大好き。好みはちがうけれども、

まず食卓は共にしよう。どちらにも好きなものを食べながら、それで

和気あいあい。魚が嫌いだからといって、別に排斥もされないし、命を

とられもしない。

ちがいはちがいのままに素直に承認して、それでそれぞれの味わいを

楽しむ。その楽しむ姿に心がなごむ。

あなたはこの考え方だが、私は別の考え方。考え方はちがうけれども、

まず席は共にしよう。そして、お互いに学び合いながら、和気あいあい。

ちがいはちがいとしても、それぞれによさがある。そのよさを素直に

とり入れつつ、暮らしを高めあう。非難もなければ排斥もない。

ましてや命に何の別状があろう。

それが人類の真の進歩というもので、またそれができるのが真の人間と

いうもので、考え方のちがいで相争っている姿は、食べ物の好みで

相争っている姿とどれほどの差があろう。

人類の生命は無限。だからその未来は無限。だからまだまだお互いに

進歩しなければならないのである。

 

● 排斥

 

受け入れられないとして、押しのけ、しりぞけること。

「外国製品を―する」

 

この続きは、次回に。

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