続「道をひらく」松下幸之助 ㊽
● 自分で払う
何か不測の事が起こると、これはえらいことだと思うけれど、事が起こ
るには起こるだけの原因があるわけで、原因なしに何事も起こるはずが
ない。それが突如として起こったみたいに思うのは、その原因に気づ
かぬままに時をすごしたというにすぎないので、今さらあわてふためく
こともいえよう。
とは言うものの、人間、一面うかつなもので、みずからが刻々にその
原因をつくり出していると何となく気づいていながらも、いざ事が起こ
ってみないと、それが身にしみて省みられない。
事の起こりはすべてわれにありである。ここまで徹したら、何の不満も
不安もないはずだが、お互いにとかくツケをよそにまわしがち。
まわして素知らぬ間はそれでもすまされるが、まわりまわって自分に
かえってきたときには、それは何倍にも何十倍にもなっている。
そしてうろたえる。
ツケはすくない間に自分で払うがよい。ツケの原因は大なり小なり
自分にもあるからである。
みんながその気になったとき、世の中は静かに新たなあゆみをはじめ
るであろう。
● 省みられない
考慮すべき対象に含まれていない。 心に留め置かれていない。
この続きは、次回に。