お問い合せ

Think clearly シンク・クリアリー ㊲-2

□ 「読書効果」を最大に引き出す四つの方法

 

ここで、この私がおすすめする読書法の、細かいところを説明しておこう。

まずひとつ目。「読書効果」というのはずいぶんと実用主義的な響きを持つ言葉だが、

「読む価値があるかどうか」という読書効果の有無を、本当に「本を選ぶ際の判断基

準」にしていいのだろうか? 答えは、イエスだ。

「二度、深く本を読む」という読書法の目的は、本の世界に空想的にひたることでは

ない。大切なのは「読む意味があるかどうか」だ。

空想的な気分にひたりたいなら、何か別のことをしたほうがいい。脳に何の痕跡も残さ

ないような本を読むのは原因がその本の出来にあるにせよ、読書の読み方にあるにせよ、

時間の無駄でしかない。読書とは、クレームブリュレを食べたり、アルプス上空を飛行

機で一周したり、セックスをしたりするのとは、根本的に違う行為なのだ。

ふたつ目。ミステリやスリラーは読書カードの対象外である。本のわずかな例外を

除いて、二回読むのは不可能なジャンルだからだ。

すでに結末のわかっている殺人事件について読みたいと思う人はいないだろう。

三つ目。自分の読書カードのマス目の数は自分で決めよう

私の場合、これからの一○年で使うマス目の数は「一○○」と決めている。一年あたり

一○冊程度という計算で、文筆業に従事する者にとっては犯罪的に少ない数だ。

だがすでに述べたとおり、私はすばらしいと思った本を二度は読む。場合によっては

三度読むこともある。一冊一冊を大いに楽しんでいて、読書効果は一○倍だ。

四つ目。あなたがまだ若く、自主的に読書を始めてからまだあまり月日が経って

いない場合には、できるだけ多くの本を読むべきだ。

 

長編・短編小説、叙情詩、あらゆる種類の実用書など、ジャンルや質を問わずに手当た

り次第にたくさんの本を読んだほうがいい。

その理由は、「秘書問題」(第3章参照)と呼ばれる、数学の最適化問題を例にして考え

るとわかりやすい。秘書問題とは、多くの応募者の中から最適な秘書を見つけるには

どうすればいいかという問題だが、そのための第一段階は、「応募者の質の全体的な

傾向を見きわめる」ことだ。面接をする応募者の最初の37パーセントは、採用せずに

面接だけにとどめ、応募者の全体像を把握する。

同様に、本を乱読しているうちに、あるいは統計学的な言い方をするなら抜き取り検査

をくり返しているうちに、あなたは文芸の世界の全体的な傾向を把握できるようになる。

本の質を判断する力をたくわえることができ、のちに読む本を絞り込むときに役に立つ。

だから自分の読書カードを作るなら、三○歳前後からが適当だろう。それ以降は、自分

で決めた読書の冊数を厳格に守ればいい。

いずれにせよ、三○歳を過ぎたら、人生の残りの時間を出来の悪い本に費やすのはもっ

たいない。


 

この続きは、次回に。

 

2025年1月6日

株式会社シニアイノベーション

代表取締役 齊藤 弘美

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