「小さいことにくよくよするな! 」㉟
74. 親切のお返しは心のぬくもり
人のためになにかをする習慣をつけるのに役だつ練習がこれだ。お返しを期待せずに
なにかしてあげるのがどれほど簡単に快(こころよ)いか、これを読むとすぐわかる。
私たちは意識するしないはべつとして、なにか人のためにしたことにたいしてお返しを
求めがちだ——
(中略)
人のためになにかするときは、それをするだけでやさしい気持ちが生まれるのに気づく
はず(あなたの心が静まっていればの話だが)。激しい運動が脳内のエンドルフィンを
高めて爽快な気分になるのと同様に、親切な行為は感情を豊かにしてくれる。
自分がその行為に参加したことで生まれる豊かな感情こそが報酬なのだ。
お返しはもちろん「ありがとう」の言葉さえいらない。親切にした相手にそれを知られ
なくてもいいのだ。
この穏やかで豊かな感情をさまたげるのは、相手もなにかすべきだという自分の思い込
みである。こうしてほしい、ああしてほしいとお返しを頭でもくろむと、穏やかな感情
が消えていく。解決策は「お返しがほしい」という自分の思いにまず気づき、それをや
さしく打ち消すことだ。そんな思いが消えたとき、穏やかな気持ちがもどってくる。
だれかのためになにかをすることを思いつき、お返しを求めずにそれができるかどうか
ためしてみよう。どんなことでもいい。ガレージを掃除して奥さんをびっくりさせるか、
早めに帰宅して奥さんのかわりに子供の面倒をみるとか。なにも見返りを期待せずに
なにかいいことをしたとき、心の中がほっとぬくもるかどうか確認しよう。
この練習をすれば、そのぬくもりこそが報酬だと気づくはずだ。
75. 目先の問題は、またとない教師
最大のストレス源は人生の諸問題だと思う人がほとんどだ。ある程度、それは真実だ。
だが、もっと正確にいえば、ストレスの増減は問題自体ではなく問題にどう対処するか
で左右される。
言いかえれば、その問題からさらに別の問題を引き出してはいないか、ということだ。
それらを危機とみなすか、それとも教師とみなすか。
問題は、さまざまなかたちや規模や程度でやってくるが、共通点が1つある。こんなこと
がなければいいのに、と私たちに思わせることだ。問題と格闘すればするほど一刻も
早く消えてなくなれという思いがつのり、ストレスもどんどんたまる。
皮肉だが幸いなことに、その逆もまた真なりだ。しかたないさ、人生にはいろいろ
問題がつきものだとそれを受け入れて、思い切って教師とみなすと、肩から荷物を
下ろしたような気分になれる。
あなたがしばらく格闘している問題について考えてみよう。今までどういうふうに対処
してきた? みんなと同じように格闘して頭で何度も分析したあげく、いい解決策はなに
も浮かばなかったはずだ。その格闘から生まれものは? たぶん、さらなる混乱とスト
レスだろう。
さあ、同じ問題をべつの角度から見てみよう。問題を押しやって抵抗するのではなく、
それを抱きかかえてみよう。これから価値ある教訓が学べるかもしれないと自分に言い
きかせてみよう。もっと注意深い人、または忍耐強い人になれと教えてくれているんじゃ
ないか? 自分の欲望、羨望、不注意、裁量のせいでこうなったんじゃないのか?
その問題がなんであれ、そこからなにかを学ぼうとする気持ちがあれば見方が変わる。
その視点にたって見直すと、目の前の問題が握りしめた拳を開くようにほどけていく。
これをためしてみると、ほとんどの問題は私たちが思っているような非常事態ではない
ことがわかるだろう。そして、そこからいったんなにかを学んだあとは、たいてい問題
のほうから遠ざかっていく。
この続きは、次回に。
2025年7月29日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美