書籍「Effectuation エフェクチュエーション」 ⑤
✔︎ 「できない」理由に対する見方を変える
・ 以上のエフェクチュエーションの論理が有効な状況は、決して、起業や新規事業の
創出のみに留まるわけではありません。むしろ、あらゆる結果の不確実性を伴う
チャレンジや、新しい何かを創造するプロセスにおいて、そうした試行錯誤を合理
的に進めるために活用することのできる、意思決定の一般理論であるといえます。
・ エフェクチュエーションの論理は、こうした不確実性な新しいチャレンジに取り組む
際に直面する問題に対して、大きく見方を転換してくれるものだと考えています。
たとえば、「何をすればよいかわからない」という目的が曖昧な状況があったとして
も、「手中の鳥」と呼ばれる手段主導で着目する原則を活用することで、「ゴールが
明確でなくとも、手持ちの手段に基づいて、まず一歩を踏み出すことはできる」と
考えることができます。また、「失敗を考えて躊躇してしまう」状況に対しては、
「許容可能な損失の原則」に基づくことで、「うまくいくかどうかを心配するかわり
に、もし失敗しても問題ないくらいにリスクを最小化して取り組めばよい」と発想す
ることができます。「思った通りに進まない」現状も、「レモネードの原則」で発想
することで、「障害自体を活用することで、偶然を組み込んだ創造的なアイデアを生
み出すことができないか?」と、予期せぬ事態を前向きに活用する視点を持つことが
できるでしょう。「自分のアイデアや能力に自信を持てない」という状況でも、「ク
レイジーキルトの原則」を理解することで、自分の手持ちの手段(アイデアや能力、
資源など)の価値というのは自分だけでは決められないのだから、「そのアイデアが
優れたものかどうかは、パートナーを獲得する行動を起こすまではわからない」と
考えることができるでしょう。
そして、「何らかの機会(チャンス)さえつかめれば成功できるのに、自分はまだその
機会を発見できていないだけだ」と考えている方も、いるかもしれません。そのた
めに、まずはさまざまな情報を収集して、最適な選択肢を見つけようと考えている
かもしれません。しかし、エフェクチュエーションの発想は、機会はどこかで発見
されるのを待っているようなものではなく、むしろ、起業家自身の行動を通じて
創出されるものである、と考えるのです。
✔︎ 発見される事業機会
・こうしたプロセスは、マーケティング・リサーチなどの意図的な努力によって、まず
満たされていないニーズや潜在的な市場を発見し、それを満足させる製品・サービ
スを開発することで新しい市場を創造する、まさに、コーゼーションの進め方で
あるといえます。
この続きは、次回に。
2025年9月18日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美