書籍「Effectuation エフェクチュエーション」 ⑧
✔︎ 目的ではなく手段に基づくことのメリット
・ 目的から始めるかわりに、これらの手持ちの手段に基づき発想された「何ができる
か」から着手することには、どのような利点があるでしょうか。最大のメリットと
して、起業家が今すぐに行動を起こせることがあげられます。逆に、目的から始めて
最適な手段を追求するコーゼーションの発想では、目的を持つこと自体が悪いわけで
は決してありませんが、それを実現するための具体的な行動を起こすことが難しく
感じてしまう恐れがあるといえます。
・ すでに持っている手段に基づいて「何ができるか」を発想し、具体的な行動を起こ
すというエフェクチュエーションのメリットは、起業家にとって重要なより高次元
の目的を諦めることなく、今すぐに着手可能な具体的な行動を起こせることだと
いえます。
・ いち早く具体的な行動を起こすことで、始めには想像もしていなかったような出会
いやフィードバックの機会が生じ、そうしたなかで、より適合的な新しい目的が
見出されることも、しばしば起こると考えられます。
✔︎ 日本のハーブ市場はどのように生み出されたか
・ 株式会社生活の木の創業経営者、重永忠氏のお話です。
40年以上も前の市場の黎明期からハーブを事業化し、川上から川下までの幅広い
事業を通じて日本のハーブのある生活(ハーバルライフ)を提案し続けてきた企業。
・ まさに手持ちの資源のなかの、「誰を知っているか」から「何ができるか」を発想
し、行動したことの成果であるといえるでしょう。
✔︎ 手持ちの手段(資源)を考える上でのポイント
・ 手持ちの手段(資源)の活用を考えるうえでの、いくつかのポイントを確認することが
できます。
まず、「私は誰か(Who I am)」には、起業家自身のアイデンティティ(自分はどのよ
うな人間か)に関わるものであれば、どのような要素を含んでもよいといえます。
他の人たちと比べてユニークな客観的な特性以外にも、起業家自身が「自分をどの
ような人間だと信じているのか」、あるいは「自分はどのような存在でありたいか
と考えるのか」といった、主観的な自己認識もまた、「何ができるか」に影響を
及ぼす、極めて重要なアイデンティティの構成要素であるといえます。
・ 手持ちの手段(資源)の第2のカテゴリである、「何を知っているか(what I know)」に
関しても、広く開始やくすべきであることが理解できます。多くの人が信じている
客観的事実である必要もありません。仮に、ほとんどの人々の賛同を得られなかっ
たとしても、起業家が自らの体験に基づいて正しいと認識していること、信念を
持っていることが、具体的な行動を生み出す強力な基盤になりうることが、重永さんの
事例からわかります。
このように、手持ちの手段(資源)のうち、起業家自身のユニークな特性や価値観、
さまざまな人生経験に基づく知識から、「何ができるか」を発想して行動に着手
することにより、他の人では生み出すことのできないような独自の方向性に道が
拓かれます。
・第3のカテゴリである「誰を知っているか(Who I know)」に関しても、より広い視点
で捉えることが有効です。このカテゴリは、起業家が頼ることのできる社会的ネット
ワークを指しますので、たとえば親しい友人や家族、同僚といった、直接的にアプ
ローチが可能で、相談しやすい人々を、真っ先に思い浮かべるかもしれません。
この続きは、次回に。
2025年10月4日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美